戯れにわたしの読書傾向について語ってみる
渋谷で映画を観て、お茶をした。お茶の相手は相手でかなりの読書家なのだが、ふとした折に、
「雨女さんのススメる本ってマイナーですよね」
「えっ!? そう?」
実はこの時点でかなり動揺してしまったわたくしである。わたしにいわせれば彼女が読んでいるような本こそをマイナーというのであって、わたしの読んでいる本は単に流行が去った本というだけで、一時期はメジャーだった本、だと思っていたからだ。
「サイトときどきのぞかせてもらいますけど、5冊くらいだーってあると、1冊くらい知ってるかなーって感じで」
「……そう? そりゃSFにかぎっていえばそうかもしれないけどさ、SFはマイナー分野だし」
「SF以外もですよ! 一応読まないまでも、本屋でひととおり背表紙とか眺めてるから、タイトルに見覚えとかあるじゃないですか。雨女さんのススメる本って、見たことも聞いたこともない、『どこでこんな本探してくるんだ』って」
「うそっ。そんなことないでしょう、わざとマイナー本探してるわけじゃないし、公共図書館に並んでる本だもん」
「あんな本、図書館のどこに並んでるんですか」
開架にちゃんと並んでいるのに、このいわれようはなに(泣)。
「このあいだ、SFじゃない本(ちなみに山田正紀「神曲法廷」)が紹介されてるから読んでみようかなーって思って本屋にいったら、絶版になっちゃったのかって勢いでどこにもありませんでしたし」
「あー、うーん、そりゃ本屋が悪いんだよ。だって公共図書館で借りるから、新刊じゃないし、出版されてから時間たっちゃってるからそういうことはあるかもしれないけど」
「それだけじゃないですよ」
「……いいんだ、どうせわたしはマイナー分野中のマイナーを読んでるんだ、どうせ」
最後はいじけつつひらきなおってしまったのだが、そういえば、別の人からも、同じようなことをいわれたのである。彼女のいいようは、こうだった。
「これまで雨女さんのオススメ本と自分の読書がまるでかぶらなかったのに、就職祝いオススメ本のときにはかぶる本がたくさんあってうれしかった」と。
それって、わたしのオススメ本は知らない本ばかりだけど、他のみなさんのオススメ本は知ってる本だった……ってこと?
おかしい。こんなことあるはずない、否、あっちゃいけないのである。
そもそも『雨の日には本を読もう』のサイト運営コンセプトは、「誰もが、あ、この本知ってる! っていうような懐かしい本、みんなが知ってる本をススメる」ことだったはず。小難しい本、一般ウケしない本、マイナーな本じゃないよ、と。
それでもSFにかぎっていうなら、ええい、ちくせう、マイナー分野のマイナー本、絶版(早川は「長期品切れ」という詭弁を吐く)本をススメちゃうこともあるかもしれないのは認めざるを得ない。けどそれは、「図書館に行くヒマがないから本棚の本からおススメ本を探してみよう」ってした結果がそうなるんだから仕方ないじゃないか(ひらきなおりっ)。ただ、そんなことはそれほどないはず。その他は……だってわたし、最近は「日本人が書いたミステリ」という、かつてのわたしなら足を踏み入れなかった分野にまで踏み込んでいるのに。おそらく「海外SF」より「日本ミステリ」のほうが分野としてはメジャーなのに。
どうしてだ。どうしてこうなるんだ。これが「オススメしている本に限る」のか、それとも「読んだ本の全部」がそうなのかはフクザツだが……もし全部公開したら「やっぱり読んでる本全体が知らないのばっかりですよ!」とかいわれちゃうのか? ……まさかね。
読書はもちろん個人的な活動だから、他の人と趣味が合わなくたって別にいいんだけど……それにしてもおかしい。わたしの読書はいつからこんなに他人に理解されないものになってしまったのだろう。
さびしい気分である。
ちょっと悔しいので、10月に読んだ本を挙げてみることにする。タイトルのみなので、「読んでない人はさっぱりわからない(作家を知ってても)」ってことはあるのかもしれないが、逆に、タイトルのみだからこそ、読んでいる人、本屋で見かけたことのある人にわかるラインナップであることが明らかになるはずだ。
「形見函と王妃の時計」「黒塚」「そこに薔薇があった」 「美味礼讃」 「カジノを罠にかけろ」 「あしたのロボット」 「サフラン・キッチン」「星を数えて」「SF翻訳講座」「ぼくが愛したゴウスト」「鮎川哲也短編集」「分身」「太陽の王と月の妖獣」「銀河番外地」「聖獣の塔」「ダークネス」「天狗風」「I am」「東京下町殺人暮色」「煙か土か食い物」 「セーラー服と機関銃」「迷宮の旅行者」「グアルディア」「死の国からのバトン」「九十九十九」「世界は密室でできている」「緋色の迷宮」 「ラッシュライフ」「腰抜け同盟」「毒蛇」「マクベス夫人症の男」「ネロ・ウルフ最後の事件」「火星の笛吹き」
ほら……マイナーな本だとはいえないよね? 古い本ではあるかもしれないけど。でも鮎川哲也に伊坂幸太郎、赤川次郎も宮部みゆきも舞城王太郎もいる。ネロ・ウルフシリーズだって有名だ。SFだってそんなにない。きっとこれは、「半分くらいは読んだことがある」か「半分くらいはタイトルを書店や図書館で見かけたことがある」ラインナップになってるはずだ!
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