「歩、あのな」
「うん?」
「忘れんといてくれな」
「え?」
「おれ、いつでも傍におるからな。おまえのことだけは、絶対、裏切らへんからな。そこんとこ、忘れんといてくれな」
              
  「The MANZAI  2」 あさのあつこ

 文化祭での漫才、「ロミオとジュリエット」から半年。中学三年生になって、クラスも変わったというのに、相も変わらず漫才、漫才といいつづける秋本。適当にあしらう術を身につけたかと思えば、ふとした折に秋本に乗せられてしまっている歩。今回秋本が持ちかけてきたのは、秋祭りの特設ステージで漫才をやろう、ということだった。そんなある日、歩を片想いの相手であり、恋のライバルでもある(!?)萩本恵菜の下駄箱の中にウシガエルが入れられているという事件が発生。こんな卑怯ないやがらせをしたのは誰なのか? 他方、歩もまた、恵菜にふられた来菅がイヤミのように口にした秋本への悪口に耐えられずに反論し、その後、来菅から手を踏まれたり、机にわざとのようにぶつかってこられたりという目にあっていた。
 他人に反論はしない。他人にいやがられること、傷つけるようなことはしない。そうやって、びくびくと縮こまって生きてきた歩だけれど、来菅に反論したことには後悔はしなかった。
 図々しくて厚かましくて鈍感だけれど、秋本は、ぼくのことを特別だといった。おれにとって特別な存在なんだと、そういった。その秋本の悪口を黙って聞き流したりしていたら、後悔と自己嫌悪で雨の中に、しゃがみこんでいたと思う。

 秋本の言葉に支えられ、秋本の存在によって強くなってきた歩の姿。しかも、うじうじしている歩だけれど、いざというときには、ちゃんと立ち上がれる強さを持っていることを……秋本は、ちゃんとみている。そんなふたりの関係の深まりが描かれた第二作目は……ちょっとこれって、BLでしたか!!
 いや、第一作めは、まあこんなもんかなと思ってましたが、二作目のあまりのパワーアップぶりにはなんというか、ええっと……。
 恋愛小説としてのおもしろみも出てきた「The MANZAI」。オススメ度もアップし、怒涛の三巻に続く。



「The MANZAI 1」 「The MANZAI 3」
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