「実は俺、サンタクロースなんだよ。お礼をさせてもらうよ」
「魔法の万年筆」(「輝く夜」所収)百田尚樹 講談社文庫
クリスマスイブだというのに、七年間働いた会社からはリストラされてしまった。小さな工業デザインの会社をやっている弟は倒産の危機に瀕している。街を歩けば、かつての恋人との苦い思い出がよみがえってくるばかり……そんな中でも、恵子は通りすがりに見かけたホームレスに手を差し伸べずにはいられない。そして、そのホームレスは、お礼だといってちびた鉛筆を差し出した……――
短編集。いずれもクリスマスイブを舞台にした「泣ける」小説である。
他の人たちがみんな幸せそうに見えてしまうクリスマスイブ。自分だけが寂しくて、苦い思い出ばかりがよみがえってきてしまう。そんな女性たちがめぐりあう奇跡。
「日頃はつらい思いをしている女の子にも夢みたいな報われる日があってもええやないか」
という思いから書かれた話だそうである。
嘘っぽいといってしまえばそれだけだが、「夢みたい」と割り切ってしまえば、夢のような話は心をなごませるいい話でもある。
「ボックス!」や「永遠の0」とは違った意味での泣ける話をどうぞ。
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