“As much as I hate my brother, what I’m afraid of is that I’m just like him.”
A war of Gifts Orson Scott Card
狂信的な父親によって育てられたZeckがBattle Schoolに選抜されたのは、その驚異的な記憶力と才能のためだったが、父親の非暴力主義の教えを守るZeckは、Battle School内で唯一の、戦わない兵士だった。しかし、戦わなければ地球に戻れる、という前例を作ることは、子どもたちすべてを家に帰すことにつながりかねない。Zeckがいかに非協力的であっても、Battle Schoolが彼を追い出すことなどないのだ。そして、Zeckはなんとなく胡散臭がられながらも、兵士たちの一員として過ごしていた――その問題が起こるまでは。
オランダ人のDink Meekerは、ある日、同じオランダ人のFillippusとのやりとりから、自分がSinterklaasのふりをすることを思いつく。それは他愛のないことであった。しかし、いかなる宗教もあってはならないとするBattle Schoolにおいて、それは宗教か、そうではないのか? 国や地域によってSaint NicholasやFateher Christmasなどと名前も日付さえも違うのだから、これはキリスト教徒だとかそうだとかには関係ない、宗教ではない、とするDinkに対し、それは宗教である、と反発するZeck。余分なものを何ひとつ持てないBattle Schoolで、自分の書いた詩や、ちょっとしたものをプレゼントすることを楽しみ始めていた子どもたちにとって、ZeckのGraffに対する告げ口は裏切り以外の何物でもなく、ついにZeckは完全に孤立する。それを密かに心配するDinkだが、彼は一方で、この事態を収拾するのはEnderではないかとも思っていた。そして、ある日……
Enderシリーズ番外編。今回は、EnderのRat Army時代を書いた一作。いっけんDinkが中心のようにも見えるが、最後においしいところをさらうのは、もちろんEnderであるのでご安心を。子ども時代のPeterも登場してひねくれ者ぶりを披露するし、Wigginsを懐かしむ人たちには楽しめる作品となっている。
それにしたって。たかが(といってはいけないのかもしれないが)クリスマスで、ここまで宗教がどうのこうのという話が書けてしまうあたり、さすがカード。Shadow系における国だの宗教だのに絡んだ紛争を思い出すと、あのときEnderがいたら、と思わずにはいられない。そういう意味でも、実は大切な作品。オススメ。
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