‘ I will never raise my hand against the son of my friends’
                           Ender in Exile     Orson Scott Card



 さて……Ender’s GameとSpeaker for the Deadの間には3000年もの月日が流れていた。Enderは(3000年を間に挟んではいるが)30歳近いおじさんになっていて、EGで知っていたEnderとのギャップがあったことは否めない。Ender’s Shadowは、EG直後の世界を描いてはいたものの、なにせBeanが中心だったので、やはりEnderの姿を見ることはできなかった……というわけで、今回のExileは、なんとShadow系、Hegemon、 Puppets、Giantと続いた話のその後を描きながら、代弁者系にもつながる、最後のピースともいうべき部分の物語となっている。
 Bugger戦争終結。しかし、地球に戻れば、Peterの駒とされることは目に見えている。そこで、Enderの姉、Valentineは、Demosthenesの意見としてEnderの地球追放を訴える(このあたり、まだ両親がその仮面を脱いでいないときなので……複雑なやりとりが描かれているのも見どころか)。当初、地球に戻れないことを悲しんだEnderだが、Valのいうとおり、Peterが自分をどのように扱うかは想像がついた。しかも、地球を追放されたる自分には、常にValがついてきてくれるという。そこで、Enderは最初の植民地となる惑星ShakespeareのGovernorとなるため、地球時間では40年以上、船内時間2年という歳月をかけて、地球を離れてゆく。惑星Shakespeareは、かつてEnderがゲームだと思っていた戦争で、実際に戦っていた兵士たち、Enderの指示に従い、あるいはEnderのミスによって、仲間を失っていった兵士たちが暮らしていた。彼らは、実際Ender の部下だったのだ。それゆえに、仕方ないこととはいえ、Buttle Schoolで、そしてそれ以前のものも加えて、2人の少年を殺し、大勢の兵士たちを失ってしまったと自分を責めて生きるEnderを、Shakespeareの人々は暖かく迎えてくれる。彼らにとって、この若き少年は、やはり地球を救った偉大なる指導者だったから。
 そして、これから発展してゆくShakespeareのために、新たな植民地を探していたEnderは、人里離れた遠い地で、かつてFantasy Gameの中で見た悪夢が現実化したものにしか見えない、不思議なものを発見する。これは、Hive queenからのメッセージなのか。Enderは、ついに自分が生きていくための新しい道を発見する。
 この話の面白さは、ここには書ききれません。
 宇宙船の中のちょっとした初恋物語(?)もかわいらしいし、Enderを若造と侮っていたAdmiral Morganをあっといわせた、惑星Shakespeareに降り立ったときのEnderの格好よさったらなかったし、Giantのときに失われていた、BeanとPetraの子ども、最後の1人(Giantでも書かれていたように、母親はAchillesの子どもだと思って育てている)との思いがけない再会もどきどきされられたし。そしてもちろん、Hive queen、 Hegemonというふたつの小さな物語の登場も。
ここでもう何もかも書かれた……といっていいのではないだろうか。Enderの物語は、おそらくこれで、ようやくなにもかも終わった(若干、残っているネタがないわけではないが……あまりひっぱってもねえ…)。読後には、その、「終わった」という充足感がある。
 それにしたって。
 今回は、わたしの大好きなPeterがあまり出てこない上に、地球時間と船内時間がかけ離れているために、PeterがHegemonになるための苦労なんかもあっさり書かれすぎていて、Enderはまるで知らないけど、いろいろ大変なんだぞ! なんて思ってしまった(苦笑)。しかも、Giantのとき、Peterがのちに“Hegemon”となる物語のために語った話では、彼がなぜ幼いときに、あれほどEnderをいじめたのか、という理由などが語られていたのに、今回、それもあっさり流されている。個人的には、なんていうか、あの部分は涙なくしては読めなかったのになー……と非常に残念。というか、Peterの愛情がぜんぜんEnderに届いていないのが、仕方ないことなのかもしれないけど、「料簡が狭いぞ、Ender!」なんて思う部分であったりも。
 しかし、本当にいい話だった。これまでのいろいろな話を読んでいなければ読めない話である、ということはさておいて、今年度ベストテン入りどころか、最高傑作だったことは間違いなし。




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