「それじゃ正直じゃない。正しくない」
     
  「ウサギはなぜ嘘を許せないのか?」 マリアン・M・ジェニングス(野津智子訳・山田真哉監修)
 エド・ベンチャリーにはプーカがつきまとっていた。プーカというのはすべての人の目に見えるわけではないおとぎの国の妖精で、気に入った人間の側を離れない。一方、プーカに気に入られた人間は、プーカを喜ばせるような生き方をするようになる。映画では、主人公とプーカは愉快に酒を飲み歩いていたものだが、エドのもとに現れたプーカは、身長190センチもあろうかという巨大うさぎで、正しくあることや道義心、それに約束どおりに送られてくる小切手をこよなく愛するアリストテレスの愛読者、だからアリ。
 アリは、エドのママがスピード違反など気にもせずに車をぶっ飛ばしているときに、車の中に現れた。そして、幼いエドがママにスピードを落とすようにいうまで、エドの手といわず足といわず、げんこつ攻撃をしかけてきた。高校生になっても、不正を目にしたときのアリの攻撃はやまず、エドは仕方なく、友人のジョンとトーマスとヘレンが"記憶の道しるべ"のおかげでいい点数をとるのを横目に日曜日も必死になって勉強しなくてはならなかった。カンニングをしなかったエドはそこそこの成績しかおさめることができず、友人たち三人が一流企業に就職した後も、あまりぱっとしない生活を送るしかなかった。でも本当のことをいえば、アリの望むとおりにすれば心がすっとすることも事実だったのだ。そんなエドに、高給のとれる仕事を分け与えてくれようとする友人たち。けれど、ある日……
 「全米で話題騒然! ベストビジネスブックに選ばれた寓話小説」ということで、とっても可愛らしい童話風に書かれてはいるが、一応ビジネス読本ということになっている(ちなみにお気づきかとは思うが、監修の山田真哉は「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の作者)。道徳読本として中高生あたりに読ませるのもいいような気もする。
 不器用で正直なエドの生き方は、とってもシンプルなんだけど……実はとっても難しいことなのかも。
 それにしても、なぜ、うさぎ。どういうわけか、人間とお友だちになる巨大な動物っていうとうさぎのような気がする。「星兎」とか。でもうさぎって怖いよね?(だからなにがいいっていわれても困るけど…巨大オウムとかはどうかしら?)



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