そもそもこの戦争にルールなんかない。わたしたちは自分の手で、自分が従うルールを作ってきたんだ。何もかもが現実を超えていた。できるだけ早くその現実を受け入れなければならない。さもないと、大変な問題を抱えることになるのだ。
「Tomorrow stage5 復讐と裏切り」ジョン・マーズデン (菅靖彦監修・二見千尋訳) ポプラ社
ニュージーランド軍がエリーたちを助けにくることはない。両親を殺された復讐心を胸に、積極的に攻撃を仕掛けることを望むリー。そしてそれは選択できることではなく、やらねばならないこと、立ち向かわねばならないことだった。口先だけで行動の伴わないケビンに冷たい言葉をかけてしまうエリーだが、死にむかわせるようなことになってしまっていいのだろうか……と、いつものように心の中は悩みがいっぱい。だが、残されたメンバーは別れがたい、別れてはならない仲間なのだ。ケビン自身も、仲間と行動を共にしないわけにいかないことはわかっていた。
予想外の成り行きから、敵の本拠地ともいえるウラウィー空港の内部に入り込んでしまったエリーたち。手元には銃もなく、このまま逃げ出すことしかできないのか? ……そんなこと、できるわけがない。いまの自分たちにできる限りのことをして、敵を叩く。そうしなければならないのだ。ここは自分たちの国、守らねばならない祖国なのだから。
コブラー湾の攻撃のときにはそれなりに計画的だったエリーたちだが、今回は計画も何もなく、逃げだした先が敵の軍事基地、というとんでもない状況に追い込まれる。どんなに敵と戦っても、何人の敵を殺しても、決してそれに慣れることはなく、ストレスで頭の中が真っ白になってしまうエリーたちの姿が、やはり今回も読み手をぐんぐんと引き寄せてゆく。
残されたメンバーは少ないのに、相手のわがままやちょっとした言動が許せずに互いに傷つけあってしまう高校生の彼ら。せっかく出会えた「大人」、ニュージーランド軍と行を共にすることができず、結局自分たちだけで何もかもを選ぶ道を強いられる。それでも、彼らが最後に下した決断はこの先二巻を待ち遠しくさせるのに十分。
Tomorrow シリーズ。見逃したら損ですよ。
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