この戦争を通じて、わたしたちはいくつかのことを学んできた。生きるために役立つものを得てきたと思う。想像力、勇気、そしてひらめきなんてものだ。
              

                 「Tomorrow stag4 闇を味方にせよ」 ジョン・マーズデン (菅靖彦監修・二見千尋訳) ポプラ社


 ニュージーランド軍に助けられ、オーストラリアを離れたエリーたち。行き届いた看護と、カウンセリングを受けた彼らは、このままずっと戦争が終わるまでここにいたっていいじゃないか……とさえ思っていた。自分たちはただの高校生で、兵士ではないのだから。だが、ウラウィーの町は敵の重要拠点であり、ニュージーランド軍ではウラウィーに詳しいガイドを必要としていた。受け入れる仲間たちを憎らしく思いながらも、エリーもしぶしぶ、オーストラリアに戻ることに同意する。
 一度戦場に戻れば、先頭を歩きたがるのがエリーの悪い癖であり、それを自覚しつつも、エリーはすっかり戦闘モードに戻ったつもりだった。だが、友の死は思っていた以上に激しくエリーを傷つけており、兵士を目にしたエリーは耐えきれずに逃げ出してしまう。エリーのその行動によって、リーだけがニュージーランド軍と行を共にし、残りのメンバーだけがヘルに残されることになった。リーは無事なのか? 待つことに厭いて、ついにまた自分たちだけで行動を起こした彼らが見たものとは。
 戦争が長引き、すでに入植者たちの姿さえ見られるようになってしまったオーストラリアで、エリーたちがふたたび戦うために立ち上がる。今回はニュージーランド軍とともにいるが、それでも最後に信頼できるのは仲間だけ。彼らの勇気と知恵とは、仲間がそろっていてこそ発揮されるのだ。だが、一人欠け、二人欠けする仲間たち。そしてエリーは今回、大親友コリーの死を知らされ、さらに大きく傷ついてしまう。
 兵士ではないけれど、すでに兵士以上に闘い、その考え方もまた兵士に近づいてきているとはいえ……やはり高校生。人の死に傷つき、家族の安否を気遣い、両親はいまの自分をどう思うだろう、そんなことを心配する。ここまで信頼し切っている仲間なのに、ちょっとしたことで苛立ってきついことをいってしまったり、そんな自分をすぐ反省したり。戦闘の中で成長していってはいるが、生身の高校生であるエリーたちの姿が、物語に重みや深みを与えている。そんな彼らが、今後ふたたび彼らだけになってどうやって闘っていくのか。次の巻が待ち遠しい限りである。




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