どちらのダイモンも、愛する者の手のぬくもりを感じて、もう姿を変えないこともライラにはわかった。これがふたりのダイモンの一生の姿だ。もうほかの姿は望まない。
「琥珀の望遠鏡 ライラの冒険V」 フィリップ・プルマン(大久保寛訳) 新潮文庫
ライラをコールター夫人にさらわれ、ウィルはふたりの天使をともなってライラを探しに行く。ライラを探すために、よろいをつけたクマや魔女たちの力を借りるウィル。そのとき、ライラは薬によって眠らされたその夢の中で、かつての親友ロジャーとの再会を果たしていた。
その後、ウィルによって救い出されたライラは、ロジャーを救い出すことを決意するが、そのためには、そのためには愛する守護精霊パンタライモンと別れなければならなかった。大きな使命のために、苦渋の決断をするライラ。そして神秘の短剣によって導かれた<死者の国>で、ライラたちは無数の幽霊たちを救う手段を探し出そうとする。
また、一方では、かつてライラたちと出会った暗黒物質研究室の研究社、メアリー・マローン博士も別世界へ通じる窓を抜け、不思議な生物たちと言葉を交わすようになっていた。マローン博士は、自らの知識をライラたちに与えることができるのか? そしてそれは、世界を救うことになるのか、それとも滅ぼすことになるのだろうか……
さまざまな人の経験や、力や、願い、すべてがひとつになって、世界を変えるために動き出す。そのときライラ、そして神秘の短剣の守り手であるウィルには、何ができるのだろうか。
とてつもなく大きな物語が、いっせいに収束にむかう。息もつかせぬスピード感に、どきどきはらはらしてしまうこと請け合い。個人的には結局最後までいい人なのか悪い人なのかよくわからなかった人もいるのだが、物語性の高さがそれを補って余りある。
一巻だけでやめなくてよかった、と思える三巻め。ということで、このシリーズは6冊続けて読むことをオススメします。
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