「わたしは、自分がなすべきだと信じていることを遂行しているだけです」
「チャレンジャーの死闘」 デイヴィッド・ファインタック(野田昌宏訳) 早川文庫
前作「大いなる旅立ち」がもたらしたものは、人類がそれまで出会ったこともなかった敵との遭遇。トレメイン提督率いる国連宇宙軍の宇宙艦14隻は、謎の生命体から植民地星系を守るために地球を飛び立ち、その中には若き宙尉艦長ニック・シーフォートの姿もあった。当初、<チャレンジャー>に乗艦するはずだったシーフォートだが、より強力な武装を必要とするトレメイン提督に<ポーシャ>への異動を命じられ、乗船間際になって、それまで覚えていたスペックを覚えなおしたり、士官を異動させたりという雑務に追われるはめになる。だが、問題はそれだけではなかった。慈善事業の一環として大量に乗せられたニューヨークの住居不定市民、トランスポップたちは艦内を汚しまわるし、かつて先任士官候補生フィリップ・タイアにいじめぬかれたアレクセイ・タマロフが復讐のためにフィリップに残忍ないじめを仕掛けている状況で……通常でさえ艦内を正常に保つ自信などまるでない……というのに、トレメイン提督には一番危険な哨戒任務を命じられ、神経をすり減らすために。しかも、ようやく状況が落ち着いてきたかと思えた矢先、金魚によってN派駆動系を破壊された<チャレンジャー>と<ポーシャ>を強制的に交換されるという羽目に陥る。いつ魚が現れるかわからない、しかも<ポーシャ>の居所を誰も確定できないという状況で漂流する。それはほとんど死を意味していた。信頼していた士官たちを失い、危険宙域内で反抗的なクルーや、浮浪児たちをまとめ上げ、ひたすら救援を待つことしかできない日々。救援が到着するまで二年。だが、食糧がそれまでもつとは到底思えない。追いつめられたニックは、とにかく艦内を正常に保つため、乗客から士官を強制徴募することを決意するが……
書くつもりはなかったのですが、せっかく再読したので(苦笑)。不幸の連鎖、ニック・シーフォートのシリーズ2巻目。今回は上巻半ばと下巻最後で大切な人が死にます。この、主人公が好きな人から順番に死ぬ……というパターン、なんとかならんものか。とはいえ、このころのニックはまだ、悲劇的状況に巻き込まれた不幸に翻弄されているだけともいえる。これがこの巻のラストにあった出来事をはじめとして、3巻目以降になるとややパターンが変わる。
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