「……もはや助けを求めようにも、相手の"帝国"は存在しないのじゃないかしら」
               
 「反逆の月2」デイヴィッド・ウェーバー(中村仁美訳) 早川書房

 前作で地球総督となったコリンが、今度はアチュルタニとの戦いに備えるため、帝国の助力を求めて宇宙へ乗り出してゆく。一方、ホルスたち帝国人も地球生まれの人々と協力し、地球における万全の防備のために全力を尽くす。とはいえ、宇宙に乗り出して行ったコリンたちが見たのは破壊された惑星の姿であり、すでに救援を求めるべき帝国が存在してはいないのではないか……という不安にかられるようなものだった。また、一方地球では、突然現れた帝国人への反発を募らせた地球生まれの人々と帝国人との間で軋轢が生じていた。人々は協力してアチュルタニの侵攻を食い止めることができるのか? 帝国は本当に失われてしまったのか?
 目につく惑星という惑星を敵とみなして破壊していくアチュルタニ。今回はアチュルタニ側の視点も入れることで、地球人と帝国人、さらにはアチュルタニ人という三者の文化的な軋轢や考え方の相違などが明らかにされる……といっても、やはりこの小説のおもしろさは「スケールの大きさ」にあるのでしょう。前作であれよあれよというまに一介の少佐から艦長へ、そして地球総督へと成り上がっていった(?)コリンだが、今回はなんとさらに上位に。この作者、遊んでいるのか真剣なのか微妙……
 自意識を持ったダハク、ついに魂まで得ることになるのか否か。そのあたりにも注目。オススメです。




「反逆者の月」
「反逆者の月3」
オススメ本リストへ