単一の種が、そんなに長い期間生存し続けられるはずがない。だが、それを言うなら、月がエイリアンの宇宙船だ、というのもあり得ない話だった。
              
  「反逆者の月」 デイヴィッド・ウェーバー(中村仁美訳) 早川書房

 単独飛行任務中のコリン・マッキンタイア少佐は、月上を周回中、惑星内部探査装置が月の内部は空洞だと示したことに疑問を覚える。だがその次の瞬間、未知の力によって宇宙船ごと拉致されたコリンが知ったことは――これまで地球人類が月だと思っていたものは、直径三千三百二十・七九五地球キロメートルもの規模の宇宙船だということだった!
 みずからダハクと名乗るその宇宙船は約五万一千地球年前の帝国人間の反逆について語り、その反逆がいまなお地球上で続いているという。しかもアチュルタニという銀河系外からの脅威が迫りつつあるいま、コリンがすべきは反逆者を処分し、地球人類をまとめアチュルタニに対抗する手段を持つことだというのだ……! 成り行きとはいえダハクの艦長となったコリンはふたたび地球に舞い戻り、かつての自分が知る由もなかった反逆者たちの抗争に巻き込まれてゆく。
 ……とにかく規模がでかい。
 月が宇宙船だった! というだけで奇想天外なのだが、帝国人たちがステイシスという手段を使って五万一千年も戦いを続けてきているというその長さもすごい。この続編のあとがきに訳者も書いているが、この作者はどうも大きいものとか数が多いものとかが好きなようで……まあ、当然死者数も大規模になっちゃうのがなんともいえないのですが。
 一部では"萌えAI"ともいわれているらしいダハクにも注目。自意識に目覚めたコンピュータは一見の価値あり。





「反逆者の月2」
「反逆者の月3」
オススメ本リストへ