「本当のサムライは、いつどこで死んでも悔いのないよう、どう生きるかを常に考えているのだ。それを政彦はことばではなく生き様として見せてくれるんだ」
           
  「ハゲタカU」真山仁

 前作の余波で日本にいられなくなった鷲津が、一年の海外放浪を経て日本に帰国した。しかし、彼を待っていたのは、腹心の部下で友人であったアラン・ウォードの不可解な死であり、無能な後継者によるやりきれないミスの数々だった。アランの死の真相に近づくための調査の一方で、アランがやり残した買収に踏み込んだ鷲津の前に立ちはだかる大きな壁。買収防衛の相手には、かつて三葉銀行の不良債権を担当し、いまや企業再建のプロとなった芝野がついていた。攻撃する鷲津と、守る芝野。だが、二人の思いを、まったく異なる正反対のものとしていいのだろうか……? アメリカの有力ファンドが買収に乗り出したとき、ついに鷲津が真の姿を明らかにする。
 人懐っこく憎めないアランの死は、読者にとっても衝撃的。ゆえに、鷲津が荒れるのもよくわかるし、アランの死を乗り越えられずに苦しむ姿に共感し、アランの両親に会いに行くシーンで涙してしまったのは、わたしだけではないと思う。
 というわけで、今回は企業買収というおもしろさだけでなく、鷲津の人間らしさというか、揺れが見えるあたりでのおもしろさもある。「ハゲタカ」の最初の方ではよわよわしい感じのあった芝野が、したたかなリストラ屋になっているのもよい。憎み合いつつも互いを認めている男同士。最強。
 さて、アランの死の真相は「……to be continued」ということで次作に持ち越し。鷲津にはぜひ、アランの復讐戦をお願いしたい。



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