他の人間の思惑に振りまわされてばかりではなく、それらとは別に、結局はひとりだということをふまえて、自分は何がしたいのかを考えていいのだと、泉水子は静かにかみしめた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　「RDG2：はじめてのお化粧」　荻原規子　角川書店

　生まれ育った紀伊山地の玉倉神社を出て、東京の鳳城学園に入学した鈴原泉水子。ある意味、究極の箱入り娘として守られていた泉水子にとっては、慣れ親しんだ地を離れ、見ず知らずの人間と暮らす初めての機会でもある。唯一の知り合いである相楽深行は、相変わらず、外面のいい優等生ぶりとはうって変わって、泉水子に対しては距離を置くそぶりを崩さない。弱気になった泉水子を支えてくれたのは、寮で同室となった宗田真響と、その弟、真夏。深行とはまた違ったタイプの優等生であり、面倒見のいい真響の後ろについて歩くことで、なんとか学園に自分の居場所を探していた泉水子だが、学園の中に正体不明の黒い影を発見してしまったことから、この学園に隠された秘密に踏み込んでしまう。山伏の深行、姫神憑きの泉水子。その他にも、この学園にはさまざまな意味で絶滅寸前の能力をもった生徒たちが集められていたのだ……
　「RDG」待望の2作目。ここにきて、ようやく事態が動き出したという感がある。主人公の泉水子がうじうじしたタイプなので、彼女だけだったら何も起こらないかもしれないのだが、もちろん、そんなことにはならない。
　閉鎖された学園の中での出来事を描いているために、なんだか青春学園小説の中に深行と泉水子が放り込まれたようでもあるが、姫と山伏の関係はなかなかに複雑である。深行の天敵ともいえる雪政が踏み込んできたことで、物語は別の意味でも盛り上がりをみせた。この先が楽しみ……なので、もう少し早いペースで続篇を望む。

　しっかし、わたし、前作で「はじめてのおつかい」は「お買いもの」の意味じゃないかも、とうがった見方をしましたが、このサブタイトルのつけかたをみる限り……お買いもの、でよかったようですね。ということは、巻を追うと「はじめてのキス」とかもあるんだろうか……



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