「これが女神だからとか何とか、そういうトンデモ話をしているのか」
「女神と呼ぶのも方便だが、守り育てられるさだめの女の子ではある。それも、一人二人の手ではなく、多くの人間によって」
                  
 「RDG レッドデータガール:はじめてのお使い」 荻原規子  角川書店

 世界遺産に認定される山奥の玉倉神社で育った鈴原泉水子は、高校生になったら寮に入って、少しは他の生徒と同じような暮らしができるのではないか……と憧れめいた淡い思いを抱いていた。山奥に暮らしているから変な子だと思われてしまうのだ、と。だが、その思いを同居する祖父に告げると、なんとすでに父親が勝手に泉水子の行く高校を決めているというのだ。しかも東京――そんな遠くまで、なぜ。友人と別れて知らない土地に行くことに反発する泉水子だが、イメージチェンジをはかって前髪を切ったその日、普段から苦手にしていたパソコンをいじっていて学校中のパソコンをダウンさせてしまい、さらには保護者代理の相良大成がヘリコプターで学校まで迎えに来る――という常識はずれの行動をとったために、さらに周囲から浮いている自分を自覚してしまう。しかも大成は、息子の深行を下僕として泉水子に付き添わせる――などということまで言い出すのだ。当然のように反発する深行と、なんでお前なんかに、とあからさまに口にされて傷つく泉水子。そんな彼女の慰めになるのは、クラス内でも唯一気になる男子、和宮だったが……
 新シリーズ開幕、というだけあって、まだまだ謎はたくさん残っている。とはいえ、主人と下僕の関係(というわけでもないのだろうが)でありながら、いじめっ子気質で口も悪けりゃ態度も悪い深行と、おどおどと意気地のない泉水子とか、父親でありながらてんでその自覚のない大成、離れて暮らす泉水子の両親……など、周囲の人々も魅力的で、今後が楽しみではある。
 タイトルの「はじめてのお使い」……最初は「お使い」=「お買いもの」だと思ってしまっていたが、最後まで読むと違う意味だったことがわかる。とりあえず、次を待ちたい。



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