戯れに中山可穂サイン会について語ってみる

 別に特に集めているというわけではないのだが、わたしは「サイン本」を何冊か持っている。有名どころをあげれば寺山修司、灰谷健次郎、浅田次郎、C・W・ニコル、ビジョルド、トリイ・ヘイデン、神林長平・・・・・・他にもあったかな?
 可穂さまのサイン本も、実はすでに持っている。
 でも、今回、「弱法師」出版記念サイン会がありますよ、と、掲示板のほうにふらりと現れた雪女さまに教えていただいて(そういえばその前後まったく姿をお見かけしていないので、サイン会のことだけを教えに来てくださった・・・まるで天使のような方。感謝してます)、これはもう、行かねばなるまい! とものすごく張り切った。
 が、これは最初からいくつかケチがついた。
 そもそものはじめは、サイン会の案内が主催書店に出ていなかったことだ。WEBサイトには載っているのに、そして他の著者のサイン会のお知らせは掲示してあるのに、可穂さまの名前は、ない。出版前に二度ほど偵察にいって、「ほんとにあるのかな?」と不安になってしまった。
 発売当日、整理券と希望人数がつりあうのかどうか心配で、仕事を休もうかとか本気で思ったのだが、そこまでしなくても大丈夫かも、という希望をもって、仕事帰りに書店へ。サイン会は文芸書売り場で行われるのだが、そんなこと知らないし、他のサイン会のお知らせは入口近くの新刊売り場前に掲示してあるので、まっすぐにそこに入っていって(その書店は←池袋の某書店ですけど、いくつかのフロアに分かれているのです)新刊コーナーを見るが、ない。これは探し回るよりきいたほうが早いかな、と思い、
「あの・・・今日発売の中山可穂の『弱法師』なんですけど」
「え? 中山・・・なにの、なに?」
「中山可穂の『弱法師』。こちらでサイン会があるはずなんですけど。整理券を配ってるんじゃないかと・・・・・・」
「なかやま・・・か、ほ・・・・・・? サイン会ですか?」
 まるでさっぱりわかりませんわたし、という顔の女店員が、カウンターの後ろにいた他の店員を呼びとめ、ふたりでひそひそと小声でやりとりしている様子。こちらは、もしかしたら全部売れちゃったんじゃないかとか、もしかしたら書店間違いか、とかさまざまな思いが錯綜して身動きが取れなくなる。
「少々お待ちください」といわれて待つこと五分以上。ようやく、売り場を教えてもらうことが出来たのだが、ねえ、ちょっと酷くありません?
 これがたとえば漫画だとか実用書だとかの売り場だったら、わかる。でも、新刊が置いてあって、サイン会のお知らせも掲示してあるような、いちばん正面にある売り場で、店員が、自分ところが主催するサイン会も知らなければ、新刊本の著者も知らないって何ごと?
 これだから信用ならないんだよなー、書店員。
 と、暖房で暑くなりすぎてふらふらしながら、その日は帰る。


 サイン会当日。
 開始まで時間があったので喫茶店などで時間をつぶして、それでも30分以上前に行ったというのに・・・・・・行列が。しかも、どういうわけだか中高年以上の男性が多い(のちに判明したことだが、古本屋の店員。それこそ、販売用サイン本のためにきている人々。彼らは誰のどのサイン会でも同じようなメンバーが出没するらしく、書店員や出版社の社員とも顔なじみ)。あらあら、三十番くらいになっちゃったわ、とか思いながら並んでいると、メッセージカードが著者の都合により変更になりましたので書き直してください、と、すでに渡されていたメッセージカードよりも二回りほど大きなカードが渡される。
 わー。短いメッセージでも緊張したのに、長い文章を、しかも立ったままで書かねばならないなんて。字が歪みまくる。新しいカードの質問事項には、「このサイン会のことをどこで知りましたか」とか「一番好きな作品は」とか、そんなの短く答えられないよ〜っていう質問が並んでいる。仕方なく、サイトで教えてもらったことを正直に書き(笑)、好きな作品は悩みに悩んだ末に「白い薔薇の淵まで」にする。・・・・・・大失敗。立ったまま辞書もなく「薔薇」って漢字で書けってか。書いたけど(あとで確認したらあってたけど)、ものすごーく反省しました。もっとわかりやすい、それこそ「サグダラファミリア」とか「感情教育」とかカタカナとか簡単な漢字のものにすればよかった。
 さて。そしてまた、やってくれたよ書店員。
「こちらに並んでくださ〜い」と叫んでいた男性店員が、
「中山可穂『ヨワホウシ』サイン会はこちらです」
と、拡声器で叫んだ。並んでいた人々(もちろんファン)のあいだに動揺と不信感が漂う。
仮にもサイン会主催の書店員ならば、本の中身を読んでいなくても、題名くらいはどういう読みか抑えておくべきじゃなかろうか。なにがヨワホウシだ、ばかもの。前のほうにいたおじさんや、列の端にいた女性などが、すかさず書店員を呼びとめて注意していたが、あたりまえだ。著者がいるところじゃなくてよかったよ、と思う。
まあ、そんなこんなしているうちに時間になって、可穂さま登場。
――さて。
これはまったくの思い込みだったんですが、塁かクーチかといえば塁だと思ってたし、絢彦か泉かといえば、当然絢彦。考えてみたら、その中間(?)のような理緒とかなつめさんのようなキャラもいるんですが、わたしにとって、中山可穂という人は、見るからにぶっとんだくらいに激しい人だ、という思いがあった(知らないって失礼だわ^^;)。ところが現れたのは思いがけず色白で小さくて華奢な人で、自分ひとり動揺してしまう。これもまた誤解に近い思い込みだとは思いますが、イメージはなつめさん。ものすごく好み(笑)。わたしは基本的に色が白くてショートカットで眼鏡かけた知的な女性に弱い。第一、キャラクターの中でなつめさんは上位に位置するタイプだったのだ。うわー。
ちょっとうれしかったのは、大抵の人が初見でなぜか読み間違うわたしの名前を、ちゃんと読んでくださったこと。そうなんですよ、すなおに読めば他には読みようのない名前なんですよねっと思ってしまった。可穂さまがそういう、惑わされずに読める人だってわかるのは、単純にうれしいできごと。
さて、そこではン年ぶりの同級生と再会なんてこともあったのですが、悔やまれるのはそのとき右手の爪を怪我していて、どうしても自分も相手も傷つけてしまったりする可能性があるので握手が出来なかったこと。
次の機会こそは(笑)。
とりあえず、大満足で帰宅。本だけでもいいけど、やはり直に著者を見るというのもいいものですね。

番外編・記憶喪失なワタクシ
2回目のサイン会

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