戯れにアメリカについて語ってみる
いきなり大きく出てしまった(笑)。
実は、オセアニアとヨーロッパとアジアは行ったことがあっても、アメリカには行ったことがなかった。日本でよく話をしていると、「欧州派」と「米国派」がいて、どっちが好き、という話だけでけっこう盛り上がれたりもする。わたしはとりあえず欧州派だけど、アメリカは行ったことないしわかんない、ってのが正直なところだった。
行ったところは(行った順)キーストーン、ラピッドシティ(ともにサウスダコタ州)、ポートランド(オレゴン州)、サンフランシスコ(カリフォルニア州)、シアトル(ワシントン州)、サンディエゴ、ロス・アンジェルス(ともにカリフォルニア州)ってことで、サウスダコタ以外は西海岸。
はっきりいってしまえば、都市部はヨーロッパの方がおもしろい。あたりまえだ。歴史がなさ過ぎる。近代的なビルはあるんだけど、それって日本だってあるし。シアトルでもサンフランシスコでもLAでも、いわゆるダウンタウンは似たようなもので、美術館や博物館、図書館、動物園、水族館、そういうもので違いを出しているだけだ、といってもいい。だから……悪いけど、つまんない。
ポートランドはその点、都市と自然が融合した感じで、ダウンタウンはいわゆるダウンタウンで他と似たようなものなんだけど、少し足を伸ばすと滝があったり山歩きが出来たりと、自然と非常に近いところにあるのが、LAなんかに比べると断然よかった。シアトルはポートランドとあまり変わりがないので(だからダウンタウンはほんとに金太郎飴なのだ)さらっと流したのだが、ここからアクセスできるオリンピック国立公園、マウント・レーニエ国立公園、はすごくよかった。世界でも珍しい針葉樹の雨林や氷河。大自然の一端にふれる瞬間。
そうなのだ。アメリカのよさは、まだ残っている広大な自然に触れることができるところだ、と思う。
そういう意味で、わたしがサウスダコタを絶対の自信をもってオススメする(あ、いきなりオススメ文になってきてしまった……くせかしら)。
サウスダコタ? いったいそりゃどこ? と思う人がまあ大半だと思う。
アクセスは、あまりよくない。おそらく日本からだとミネソタあたりで乗換え。NYからでもLAからでも乗り換えがある。国内でも直通があんまりないってことだ。で、聞きなれない名前の(大統領選でやけに取り上げられたので、耳にした人は多いとも思うが)この州にはいったいなにがあるわけ、と思うだろう……はっきりいって、なにもない。
いや、あるには、ある。
が、ないことが、いいのだ。
見渡す限り360度の地平線。地球の丸さが実感できる、視界の広さ。空と地面の境のないつながり。空港から降りたとたんにこれである。ガツン! という感じだ。あまりの「なにもなさ」に。
そりゃあ、そうだ。ここは「大草原の小さな家」があったところで、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」の舞台だ。
とはいえ、なにもないないとばかりもいっていられないので、一応「ある」ものから先に話をしておこう。
映画やドラマのワンシーン、そうじゃなくても、大統領の顔が大きな岩山に彫ってある…のを見たことがある人もいると思う。
それ、マウント・ラッシュモアがあるのが、ここだ。
インディアンの聖地に掘られてしまったアメリカ大統領に対抗してインディアンたちが岩山を彫っている「クレイジーホース」、完成までにン百年かかるかもしれないといわれているでかい像、もある。
アルマゲドンやスターシップ・トルーパーズで小惑星だの、およそ地球上とも思えない荒涼とした風景として使われたのが、トリイ・ヘイデン「機械仕掛けの猫」(ハヤカワ)でも舞台となったバッド・ランズ国立公園。
岩山ハイキングが楽しめ、湖で泳げ、狭苦しい岩のトンネルをバスが超絶技巧で通り抜ける姿が眺められ、バッファローやらプレーリードッグも見られる…のがカスター州立公園。
そしてもちろん(?)、インディアンのいるところにカジノあり。デッドウッドという街はラスベガスには劣るものの、逆にいえばラスベガスよりも数段エコノミーなカジノ街。
足を伸ばせば隣の州、「未知との遭遇」で巨大UFOがおりてきたデビルスタワーもある。
8月の第一週あたりは、ハーレーダビッドソンのラリーが開催され、全米中からイージーライダーもどきが集合するという、とんでもないときもある。バイク好きにはたまらないかも。
しかも、ここはアメリカ最後のゴールドラッシュの土地。そう、金が取れるのである。ってことで、金細工がやたら安い。しかもブラックヒルズゴールドと呼ばれる、金、ピンクの金、緑の金、の三色で葡萄の形をかたどったもの(なぜ葡萄なのかは、サウスダコタにいってガイドに聞いて)。お土産にはぴったりである。そうじゃなくても砂金とりが楽しめたり、鍾乳洞があったり……なんだ! いっぱいあるじゃん! って思った?
そうなのだ。
いっぱいあるのに、ないように見えるほど広い。
それがサウスダコタなのである。
日本で、いまあげたようなものたちがある観光地、と考えたら、なんだかごちゃごちゃしてそうに感じてしまうのだが、サウスダコタはそうはいかない。
まあ、カスター州立公園だけで最低でも一日はかかるだろう。マウント・ラッシュモアはまああっさりいけるが、バッドランズも半日は必要。
とにかく、広いのだ。
それでも。
わたしはいまのところ、世界でいちばん好きな場所としてバッドランズを思い浮かべる。なにもない。ただひたすら荒れ果てた、岩だらけの土地が広がる。だが、空と大地が一体となったそこが訴えかけてくるものを足で感じられたとき、こみあげてくるものが、なにか、ある。
グランド・キャニオンのほうが大きいですよ、といわれた。だが、グランド・キャニオンのすべてを感じるのはムリだ。しかもキャニオンというだけあって、見下ろすかたちになる。一日程度の観光では「身体で感じる」のは不可能。だが、バッドランズは、その中に入れる。荒涼とした風景の中を歩く自分がいる。太陽に照りつけられた大地の熱を身体中で感じることができる。だから、わたしはバッドランズのほうが好きだ。
なお、冬は極寒ではあるが、観光はできる(カスター州立公園は封鎖されることあり)し、スキー場もいくつかあるので、訪れるなら季節は問わない。が、夏のほうがいいことだけは付け加えておく。夏…というか、春先、か。9月末には雪が降り始めるし、真夏は40度近くなるので、暑さ寒さに弱い人は考えたほうがいいかもしれないが。
で。
ここを読んで、サウスダコタに行こうと思ったけど、どこの旅行社にも載ってないじゃん! と思ったら。ぜひ、わたくし雨女までご連絡ください。サウスダコタ唯一の日本人コーディネーターを抱えているツアー会社を知っております。なにせ五週間もそこで遊びながら働いていたので(逆ではない。この順で正しい^^;)。英語にそこそこ自信があったら、個人的に行って、そこらのモーテルに泊まるという手もあることはありますが。日本人がほとんどいない土地です。なにせそこらにいる観光客はアメリカ人です(笑)。
そもそもサウスダコタは白人90パーセント、インディアン5パーセント、残りの5パーセントに日本人や中国人や黒人など…が含まれる。日本人なんてひとりもいない都市もたぶんあるだろうし、留学生もそういない。ってことはなにかっていうと、一般のひとは「日本人の英語」に慣れていないということだ。西海岸の人々や都市部の人々は日本人や外国からの観光客に慣れていて、多少のことは聞き取ってくれるが、サウスダコタはそうはいかない。し、彼らの英語も容赦がない。日本人を相手にしたことのある人々と話せるほうが断然らくだ、と思う。だから、最初は個人ツアーでもなんでも、ひとりで組み立てるんじゃなくて、相談したほうがいい。きっと親切に答えてくれるだろうから。
それにしても、どうしてサウスダコタツアーがないんだろう。ほんとに不思議である。
とにかく、絶対のオススメだってのに。
追伸。ポートランドで「いままでアメリカに来たことはあるのか」「ええ、サウスダコタに」というと、たいていは…「なんてこった!」「なんでだ?」「どうしてあんなところにいったんだ」「あれはアメリカじゃないぞ、NYとかLAに行け」といわれたものである。わたしのメインティーチャーの義母は、サウスダコタ出身だが、死んでサウスダコタに埋められたら墓の中で暴れてやる、じゃないけど、なにかそのようなことをいったとかいわないとかで……思い出すのもいやなくらいに嫌っていた。
それは、そうかもしれない、と思う。日本人が、一度飛び出したど田舎を忘れたような気持ちというか。もしアメリカ人が、はじめての日本体験が網走(べつに網走に恨みはない)、といったら「どうして?」っていってしまうだろうし、そういう感覚かとも思う。酷暑、極寒だし。けれど、そういうところだからこそ、日本人には気に入られやすい場所だとも思うのだ。
ただ、もしも、初めてのアメリカがサウスダコタだったら……たいていの人に、上記のようなことをいわれ、あきれられることが多い、ということだけは、蛇足ながら書いておく。
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