「あら、あたしはね、直感と論理がリバーシブルでかみ合ってるのよ」
「机上の論理」(「象と耳鳴り」所収)恩田陸 祥伝社
現役で活躍する検事の兄と弁護士の妹。ミステリ好きなふたりの前に差し出された四枚の写真。犯罪に関係したある人物の昔の写真なんだけど、この部屋の持ち主の人物像と、何をした人間か当ててみない? そんな唆しに乗って、兄妹ふたりが捻り出したこの写真の人物像、そして真実とは。
短編集。
「六番目の小夜子」の主人公、関根秋の父、多佳雄と、兄の春、姉の夏が登場し(残念ながら秋本人は出てこないのだが)なかなか賑やかな姿を見せてくれる。
「――海にいるのは人魚じゃないんだよ」
ふと耳に入ってきた組み立てた推理が暴き出す恐ろしい犯罪。
純粋な安楽椅子探偵というわけではなく、彼らはあちこちに移動し、時にはインターネットまで使って情報を手に入れているのだが、根本にあるのは純粋に理論のみで構築された美しい謎解きだ。
それにしても。推理小説を読んでいると、こうやって謎解きを楽しむ人々というのは多数登場するのだが、わたしの周囲でそんな頭を使う楽しい会話をしたことがあったかなあ、とふと省みてしまったりもするのである。
(あ、これって以前もどこかで書いたような気がする)
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