なぜこの世に犯罪者が存在するのか。犯罪者になるのはどういう人間なのか。何が人間を犯罪へと導くのか。
              
 「トライアングル」 新津きよみ  角川書店

 二十年前、「二分の一成人式」として、十歳の自分が二十歳の自分に手紙を書いた数日後、葛城佐智絵は何者かに誘拐され、殺害された。佐智絵の隣の席に座り、彼女にひそかな想いを寄せていた郷田亮二は、二十年後、医師を辞めてインターポールの刑事となって日本に戻った折に出席した同窓会で、葛城サチと名乗る女性と出会う。まるで佐智絵そのもののように振舞うサチ。彼女はいったい何者か? 現在の窃盗事件を追いながらも、二十年前の事件にひきつけられてゆく亮二。同僚の刑事丸山から、当時、事件を担当していた刑事を紹介してもらい、亮二は徐々に過去の事件と向き合ってゆく。だが、そんなある日、過去の事件とかかわりのあった人物が殺害され……――
 十歳の少女の突然の死は、周囲の多くの人々に痛みを残した。事件がきっかけで教師を辞め、現在、十歳の娘の母となった教師は、娘の無事を過剰に心配する日々を送る。また、葛城佐智絵の両親も、事件後に離婚。そのきっかけとなったのは、やはり娘の事件だ。現在の事件もまた、過去があったからこそ発生したのかもしれない。
 なぜこの世に犯罪者が存在するのか。感情を隠すことが下手なために、かえって相手の感情を読むことが得意な亮二は、次第に、罪を犯してしまう人の心情にも理解を寄せるようになる。物語は、佐智絵の事件を基調としながら、現在の窃盗事件、殺人事件ばかりを扱っているようにみえる。しかし、最後にようやく最初の事件の真相が明らかになる。そのとき亮二はどうするのか。
 ドラマとは別の展開らしい(ドラマはみていない)。オススメ。



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