マックは金色の光であり、救い主であり、ジョニーの存在の中心点であり、マックに暖かく是認されることは喉が渇いているときに冷たい泉の水を心ゆくまで飲むことだ。
            
 「真夜中の相棒」 テリー・ホワイト(小菅正夫訳) 文春文庫

 ベトナム戦争の最中、殺戮の行われた直後の村で、マックはジョニーと出会った。すらりとした金髪の青年。ショック状態の彼は反応も鈍く、口もきかず、ただぼんやりとマックの言葉を聞いているだけだった。自閉症気味で、マック以外の者とはろくに口もきけないジョニー。他人と親密になったことのないマックにとって、全面的に寄りかかってくるジョニーの存在は重く鬱陶しい。あんな頭のおかしい男とは離れよう、と思いつつ、それでも結局、マックは周囲の者たちの反対をも押し切って、自分の除隊と同時にジョニーも除隊させ、ふたりはともに生活を始める。独りでいることをさびしいとも思えないほど孤独に生きてきたマックにとって、誰かに頼りにされるということは、ただそれだけで捨てがたいものだったからだ。
 だがそれは、ポーカー好きのマックが借財を重ねるだけの日々であり、借金取りに半殺しの目にあったマックのためにジョニーがふたりの男を殺し、そのことがきっかけでプロの殺し屋として生きることを強いられる日々でもあった。ジョニーとふたりで今度こそはまともな生活をしよう、と口にしながら、それが出来ずに泥沼に落ち込んでいくマック。そんなマックにジョニーはただひたすらについていく。殺し屋の顔をしながらも銃を使うことの出来ないマックが下調べをし、天使の顔をしたジョニーが殺しを請け負う。ふたりはアメリカ全土をプロの殺し屋としてさすらうが、ある日、思いもかけないことから予定になかった男を殺してしまう。
 ジョニーが殺したのは、偽装した警官、マイクだった。そして、相棒のマイクを失ったことで、警察官という生き方からも逸脱してしまう男、サイモンがふたりを追う。彼の頭にはマイクを殺した犯人を見つけ出し制裁を加えることしかなかった。それは彼の強迫観念ともなり、職を失い、家庭を失い、それでも、そのことを嘆くことすらなくひたすら手がかりを追って全米を駆けさせることとなる。そんなサイモンに、ようやく一筋の光が差し込む。しかしそれはサイモンにとっても思いがけない出会いのはじまりだった……――
 三人三様の孤独。ひとりでは癒されることがなく、ふたりでいても尚さびしい。世間に裏切られ、忘れられ、ひっそりと肩を寄せあって生きながらも、埋めきれぬ孤独感。サスペンスとしての面白さと同時に、三人の心理描写からも目が離せない逸品。MWA賞受賞作。


 注*訳がイマイチなんですよ、最初にいってしまうと。しかし、中身はいいです、ほんと。



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