いかなる困難に出会おうとも、自己を直視する以外に道はない。
 いかに悲しみの涙の淵に沈もうとも、それを直視することの他に我々にすべはない。
 海をみつめ、大海に出でよ。嵐にたけり狂っていても海に出よ。
           
  「時に海を見よ:これからの日本を生きる君に贈る」渡辺憲司  双葉社

 2011年3月、震災のために中止となった立教新座高校の卒業生のために、学校ホームページに載った校長先生からの言葉……大きな反響を呼んだ「三月のメッセージ」に続く、校長先生から若者に贈る言葉の数々である。
 大学は何のために行くのか。その答えとして、「大学に行くとは、『海を見る自由』を得るためなのではないか」と書いた数ヶ月後、「いま贈る言葉」として、
  私は君たちに「海を見よ」と語った。
  私が海を見た日のことをまず語らねば、君たちの背中を押すことは出来ない。
  海を見た日のいくつかの断片を書き残すことにした。そしてかつて海を見つめ、
 海に出た人たちのことも。

 というメッセージに続いて、多くの章が語られることになった。
 孤独について。夢について。言葉について。友情について。紳士たれと語り、いまの日本で生きる若者に、どのように生きるのか静かに、ときに熱く語りかける。
 立教新座は男子校なので、どちらかといえば男子向けのかもしれないが、女子が読んでも胸にすとんとくる部分は多いと思う。
 上から語りかけるのではなく、ともに考えようという気持ちが伝わってくるために、共感できる部分が大きいのだと思う。
 多くの人に読んでもらいたい本。オススメ。



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