注目されたいがために咲いた薔薇は、美しくも何ともない。
                   
「天下御免の向こう見ず」爆笑問題 二見書房

 「爆笑問題」太田光のコラム集。相方である田中裕二の紙粘土作品の写真が添えられていて、ふたりのトークも収められている。
 と、これだけではよくわからないかもしれない。が、うまく説明できないのは、一つ一つの文章が非常に短く、上手にまとめることができないからである(これは太田が悪いのではなく、もちろんわたしの能力不足である)。
 出版年が古く、爆笑問題らしく時事ネタを扱うことも多いので、松田聖子離婚記者会見だの、藤田朋子写真集会見だの、すっかり忘れていたような話も出てくるし、オウムや薬害エイズなどの話もあって「ああ、同じ時期だっけね」と思うこともあったりする。いまではゴールデンタイムに何本もメイン司会で番組を持っているふたりだが、いつかゴールデンタイムに番組を持ちたいというようなことを話していたりもして、しかも「僕らの場合はそれだけじゃない部分もあるんで」なんて言葉を見ると、なんかすごく純粋さを感じてしまったりもする。
 が、しかし。
 わたしがこの本をおススメしたのは、実はものすごく気になるところがあるからだ。
 太田光の文章というのは、彼の人柄なのかなんなのか、最後の数行の匙加減がやたらにうまい。一番最初の「夏休み」の最後の数行など、夏休みとか子どもの頃の思い出とか、子ども特有の純粋な残酷さのようなものがさりげなく浮き彫りにされていて、わたしはもうそれだけで、やられた、という気分になった。ところが、「子供人」なんかになってくると、そのラストには背筋がひんやりしてくるような不気味さがある。これはいったいなんだろう。
 ともあれ一度、読んでみてもらいたい。



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