「ぼくだって、まかり間違えば、言葉がわからなかったかもしれない。でもだからって、ぼくに知性がないってことにはならないよ」
            
 「テメレア戦記U:翡翠の玉座」 ナオミ・ノヴィク(那波かおり訳) ヴィレッジブックス

 英国空軍でウィル・ローレンスとともに闘う竜テメレアが、中国産の稀少種セレスチャル種であることが明らかになった。知性を重んじ、戦場に出ることはなく、皇帝にしか所属しないはずのセレスチャル種の竜が、英国空軍の、しかも一介の空佐を担い手としていることに中国側は公式に抗議。ついには、皇太子の兄ヨンシン皇子が中国使節団の代表として現れ、テメレアを中国に連れていくと強硬に主張し、ローレンスと空軍のテメレアチームの一行は、中国へと旅立つこととなる。
 長い船旅ののちに中国に到着したテメレアが知ったのは、中国でのドラゴンの扱いと、英国での扱いとの違いだ。人とドラゴンが同時に歩くことのできる通り。さまざまに工夫を凝らした料理。自ら稼ぐドラゴン。テメレアの知的好奇心をさらに満足させるような、自ら文字を読み、書くことを教えてくれる相手。しかも、セレスチャル種は中国の中でも稀少な種として敬われ、ときには人間以上の扱いを受けている。当初はテメレアとの別れなど考えられなかったローレンスだが、テメレアが幸福になるのは、はたしてどちらだろう、と心が揺れる。
 絆を深めていく第一巻の次は、絆が試される第二巻。ドラゴンの繁殖術にすぐれた中国のありさまなども素晴らしく、戦いが中心だった第一巻とは別の魅力にあふれた巻となっている。
 それにしても、相変わらずおもしろい! 寝る間も惜しんで読んでしまいました。広い世界を見ることで、自らの強い意志を持ち始めたテメレアもいいし、陰謀に巻き込まれながらも英国軍士官としての誇りを失わず、つねにテメレアを愛し続けるローレンスもよい。第三巻も楽しみ。





「テメレア戦記T」
「テメレア戦記V」
オススメ本リストへ