僕は都会に転校して、毎日ヤンキー風の中学生に「一緒にヒップホップダンスを踊ろうぜ」と誘われている自分を想像してみた。それは、とんでもなくうっとうしい。
    
      「狐フェスティバル」瀬尾まいこ(「Teen Age」所収) 双葉文庫

 地方の一都市に住む「僕」和也にとって、今年の狐がえりはとても大切なことだった。五穀豊穣を祈って家々を回らねばならないのだが、今年、和也の地区には子どもが三人しかいなかったのだ。そんな和也にとって、転校生三崎花子の存在は大きかった。なんとかして三崎を仲間に入れようと毎日彼女の家に通う和也だが、思いはすれ違うばかり。そんな和也を見ていた姉は、和也だって都会にいってわけのわからないものに誘われたらいやなのではないか、という。そして和也は……――
 十代の少年少女の姿を描いた短編集。角田光代、藤野千夜、川上弘美、島本理生、瀬尾まいこら、七人の作家が瑞々しい十代の姿を描いている。
 堅苦しい寮生活の中にある楽しみや悲しみを描いた「神様のタクシー」、突然見ず知らずの男の子から告白された「春の乱」、中学を卒業し、高校に入学するその隙間の春休みを描いた「イモリのしっぽ」など、いつかどこかで知っているような、自分もその瞬間にいたような、そんな気がする一冊。七つの作品の中には、きっと深く共感できる作品もあるに違いない。十代から、かつて十代だった人まで、すべての年代にオススメできる一冊。




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