「我らはおぬしを誘いに参ったのじゃ。この、時果つる楽園に」
「時果つる……」
「そうじゃ。我らはおぬしに永久を贈って進ぜよう。近いうち、咲き誇る一番美しい時を封じ、おぬしを永遠の花に設えてやるぞ」
           
 「末枯れの花守り」 菅浩江  角川文庫

 女性には(男性にも?)、自分や他人を花になぞらえることがあるのではないかと思う。この物語に出てくる女性たちは、なんらかの理由で花に己をかけた者ばかりである。朝顔の最初の一輪が咲いた日に知りあった男性が、最後の一輪になろうというときに去りつつある現実。朝顔の蔓のように絡みついた思いの中に忍び込んでくる、永世、常世と名乗るふたりの姫。とまった時は、永遠とは楽園と等しいものなのか。揺れるこころの隙をつく姫たちに、しかし、「鬼」と呼ばれる花守りが立ち向かう。
 連作短編集である。すらすら読めるので、菅浩江初心者にもオススメだし、SF作家でしょ、なんて思わずに手にとってもらって間違いない。時代小説好きにも受けるのではないかとも思われる。なにせ、雰囲気がいい。現実と異世界(しかも妙に古風)が微妙に混じりあって、その具合もなんともいいし、ときにほろりとさせる話もあり、最後はすがすがしく終わる。
 が……いや、笑ってはいけない。笑ってはいけないんだけど……笑ってしまった。だって、一番美しい時を封じる、んですよ? これってブギーポップじゃん…と思ったら。花守りはそうはさせじと戦うんですが、コスプレしてまして。わー、今度はブギーポップのコスプレ好きがこっちにきたのか! ……なんてね。ひさしぶりのブギーポップとあまりあいだをあけずに読んだのが悪かったようで、笑いがとまらなくなってしまった。ごめんなさい。菅浩江、けっこう好きなんですが…申し訳ない、今回がこんなオススメ文で。

(こんなところで言い訳をするのもなんだが、わたしが文章ではなく口で紹介すると、大抵が笑い話になってしまうのである。「感動作なのに、雨女さんのオススメ聞いてから読んだら、笑えちゃったじゃないですかー」ってことが、けっこうある。……申し訳ない)



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