プレアデス星団は八重山諸島を象徴する星座だ。人も神も寂しいときは夜空に家族の面影を見る。夜空に群星があれば、東シナ海にも群島がある。その八つの島を―――
統ばる島と呼ぶ。
「統ばる島」 池上永一 ポプラ社
神のわがままとしか思えない要望により、大切な祭の中で超絶技巧を要する踊りを担当することになった中学生ふたりの物語「竹富島」。何もなく荒れ果てた島だからこそ何に対しても期待しなくなった女にはふさわしい……そう思っていた女性が出会った桃源郷伝説「波照間島」。外交官試験にまで受かった過去を持つ超エリートの新人女性教員が出会ったゆるゆるな子どもたちとのちょっぴり不思議な学校生活「黒島」などなど、八つの島のそれぞれのエピソードを綴った連作短編集。それぞれにまったく異なる物語のように見えていて、最後にそれらが少しずつ重なっていくのもよい。
いろいろなタイプの物語があったが、個人的に一番おもしろかったのは、やはり「黒島」。東大卒のエリートで、ばりばりの教育至上主義者で理屈っぽいが、一方ではざっくばらんで物怖じせず、しかも酒豪という鷹宮聖子が強烈によい。一歩間違えると、池上作品にありがちな強烈キャラに転落(?)しそうだが、彼女の場合はそれを教育者であるという思いがが押しとどめているのか……
行ったことがないところだし、なんとなくぜんぶが同じようなところじゃないかと思っていたのだが(失礼!)、それぞれに特徴があるんだなあ、ということもわかって、読んでいて行ってみたいなという気持ちになった。あ、でも西表島はいやかも……全体にほのぼのした作品が多い中、これだけは気持ち悪いホラー。怖い話が苦手な人はここだけ飛ばすことをオススメします。
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