「東京が粋(いき)なら、大阪は粋(すい)や。よう覚えとけ。引け目を感じることはいらん」
「ハナシにならん! 笑酔亭梅寿謎解噺2」 田中啓文 集英社文庫
前作の最後で落語のグランプリO−1に出場することが決まった竜二だが、相変わらず金髪のトサカ頭で、古典落語への情熱はあるものの、ときどきはその気持ちにもぐらつきが。しかも東京で開催されたO−1では上方落語とはまるで違う東京の若手噺家たちの実力を見せつけられて……――
落語に絡めたちょっとしたミステリが読みどころのこのシリーズ、とはいえ今回はどちらかというとミステリ色はあまり強くないような気もする。ここまできたら梅寿師匠や竜二の魅力だけでも読ませることが可能ということでしょうか。破天荒といえば聞こえはいいが、もはや「無茶苦茶」としかいいようのない梅寿師匠にどつかれけなされ、せっかくテレビやラジオの仕事をもらっていたはずなのに師匠が松茸芸能と大ゲンカしてしまったせいで新事務所設立のために奔走しなければならなくなったりと、竜二の内弟子生活は前巻以上にパワーアップ。それでも傍若無人……というより横暴きわまりない師匠のふとした一面がほの見えてほろりとさせられるところなど、やっぱりいいわあ、この話。
ってわけで、落語ミステリとしては一押しの笑酔亭梅寿シリーズ。実は「ハナシにならん!」の文庫化とほぼ同時に、3巻めがハードカバーで発売されています。なんていうか……商売うますぎ。
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