「わたしはあんたたちを絶対に許さない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい」
「贖罪」湊かなえ 東京創元社
空気がきれいなことだけが自慢の田舎町。とはいえ、そこにはいつしか「空気がきれい」なために、精密機器メーカーの工場が建ち、都会からやってきた人々が混じり住むようになっていた。子どもたちの世界にとって、自分たちの知らない環境で育ち、おしゃれな洋服を着て、食べたこともないようなケーキをおやつにしているようなクラスメイトは羨望の的だった。そんな都会からやってきた美少女エミリちゃんが、ある日、無残な姿で殺されてしまう。その直前まで一緒に遊んでいたのは、同級生の少女たち四人。どうしても犯人の顔を思い出せない彼女たちに投げつけられたエミリちゃんの母親からの言葉は、彼女たちにとって、呪いにも似た力を持つ。犯人が見つけられないのなら、償いを……しかし、なにをどうすれば償いになるのだろう。少女たちは成長の過程でそれぞれの道を歩みながらも、「償い」という呪縛にとらわれ、人生を狂わせてゆく。
物語は、事件にかかわった四人の少女それぞれが、かつて自分たちに償いを求めたエミリちゃんの母親に対してこれまでの自分の人生や、自分たちが考えた償いというものについて語るという形式で進められる。このあたりは、いつもどおりの湊かなえである(ついでにいうと、登場人物の語り口調にあまり変化がないのもいつもどおりの湊かなえ。……残念)。
同級生を殺されてしまった少女たちにできる「償い」とは、いったいどういうものだろう。もし自分だったら、と考えると、母親からぶつけられた激情の言葉は重い。
「告白」「少女」などが好きだった人にはオススメ。
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