「そもそも、催眠術なんて言い方はしません。専門的には催眠法または催眠誘導法といって、オカルトや超能力じゃなく心理学の技法のひとつなんです」
「すると、科学的根拠があるというのかね」
「ええ」
「千里眼」松岡圭祐 小学館
米軍横須賀基地から、突如ミサイルが放たれた。犯人は山奥の寺に一発目を放った直後に捕らわれたが、すでに二発目の発射コマンドを入力、さらに解除用の暗証番号を変更してしまっていた。目標は首相官邸。残された時間は二時間と少し。そして元から神経を病んでいた犯人に暗証番号を自白させる手段として、ふたりの女性が招かれた。千里眼の異名を持つカウンセラー友里佐知子と、元自衛官からカウンセラーに転身した異色の臨床心理士、岬美由紀である。
友里の落ち着きと岬のカウンセリングによって、無事暗証番号を手に入れることはできたが、犯行を計画した謎の集団"恒星天球教"はさらなる攻撃を予告してくる。時を同じくして、美由紀の担当している小学生、宮本えりが本来なら登校していなければならない時間に、東京観音に出かけていることが発覚する。しかもそれは、どうやらえりだけではなく、複数の人間が行っていること、強力な後催眠によるものであることがわかってくる。えりの行動と恒星天球教には何かつながりがあるのだろうか?
催眠、という、ちょっと怪しげな響きのある分野を、医療カウンセリングの観点から描いた作品。もちろんどきどきはらはらするシーンもあるが、カウンセラーってこういう仕事をしているんだ、とちょっと驚くようなこともある。
元航空自衛隊のパイロットという異色のカウンセラー美由紀の活躍があざやか。オススメ。
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