他人の背にいる霊は、あれほど見ることができるのに、私の背にいるはずの霊が何者か知ることもできないなんて。
「精霊探偵」 梶尾真治 新潮社
「私」、新海は、妻を亡くすという事故の後、しばらく記憶をなくし、気がついたときには他人の背後霊が見えるという特殊能力を身につけていた。マンションの1階にある喫茶店『そめちめ』のマスターとママ(背後霊は「私」の両親)に励まされながらもうつろに日々を過ごしていた私だが、ひょんなことから、妻の那由美と知り合いだった女性の失踪事件に関わることになる。スーパーでパートをしていた平凡な主婦が何も残さず失踪したのだ。夫や子どもたちの背後霊に聞けば何か手がかりがあるだろう……と考えるのだが、背後霊のつかない一家なのか、彼らの背には何も、誰もいない。このことには何か意味があるのだろうか……?
新海によって邪気たっぷりの背後霊を追い払ってもらい、ホームレスから一躍有名歌手になった荒戸、お母さんについた黒猫の霊に苛められていたのを助けてやった小夢ちゃん、など、周囲にいるのは背後霊も含めて個性的な面々。事故を引きずり、亡き妻が自分の背後霊になっているのでは、いつか誰かの背後霊になっている妻と会えるのではと淡い期待を抱きながら探偵を続けていく新海だが、妻の霊と再会することはできないまま。しかも、大したことなどないと思っていた主婦の失踪事件には、背後に謎の大きな組織が絡んでいるようで……
大まじめに話がすすんでいくかと思いきや、とんでもなく妙な部分もあり(あまり書くとネタばれになってしまうので書きませんが、後半、とあるものにつけられたネーミングなど……新海もがっくりするくらい)、ユーモア小説の部類なのか? ジャンルわけするとしたら、ユーモアホラーSFとか、そんな感じだろうか。
最後のどんでん返しが見事。
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