「仕事がないから悪いことするしかないでしょう！」
　　　　　　　　　　「裁判長！　ここは懲役４年でどうすか」　北尾トロ　文春文庫

　これは書き手の北尾トロが足繁く通った裁判の傍聴記録である。当初、右も左もわからず、どんな事件を傍聴すれば面白いのかもよくわからず、「傍聴マニア」たちと知り合うこともできずに、とにかく手当たり次第に聴きまくることから始めた裁判の傍聴であるが、この手当たりしだいぶりや、コツがつかめずにうろうろしてしまう、なんていうところも含めて、とにかく面白い。変にプロっぽくないので、読んでいる素人のこちらにとっても非常にわかりやすいものになっているのである。
　ドクロマークのトレーナーを着て反省の弁を述べる被告人、美人の検察官、やる気のなさそうな弁護人。オウム事件のような大きなものから、電車内での痴漢や窃盗、はては離婚裁判まで。民事刑事を問わず、とにかくいろんなものを聴いているのだが、なんだかそこまでのめり込むのがわかるような気がしてしまう……のもスゴイ。
　明日は我が身、とかなんとかいいながら、コイツとは絶対共感できない、なんていう事件ももちろんある。そういうところもかなりストレートに書いているし、傍聴のプロたちは騙されない被告の涙ながらの発言に思わず感動してしまったり……という失敗談（？）も正直に書いている。傍聴マニアたちのように、「判決は読める」なんていうほどプロじゃないからこそ、伝わってくる面白さ。
　一度、裁判の傍聴に行ってみるのもいいかも、と思わせる一冊。オススメです。



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