「あたしたちは、ただみんなとはちがってるっていうだけなんだよ。それだけのこと。へん、ってそういうことなんだよ。他とはちがっている人のこと」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　「最悪なことリスト」トリイ・ヘイデン（入江真佐子訳）　早川書房

　最悪なことリストの第一位は、なにもないこと。自分の身に起こっていることを気にかけてくれる人がだれもいないこと。自分に帰っていく場所も人もないこと。
　里親から里親へと転々としていたデイヴィッドは、子ども用の刑務所のようなところに入ってしまった姉のリリーと別れ、初めて新しい里親のところにひとりで行くことになってしまった。ちいさくてしなびたおばあちゃんは、里親をやるほど裕福には見えず、しかも車にも乗らない。最悪なことは次々に続き、家からすぐ近くの学校に行ったデイヴィッドは、自分が学年途中なのに落第していることを知る。さらにクラスにデイヴィッドの吃音をからかう男の子たちまで。けれど、デイヴィッドはある日、フクロウの卵を発見した。年下であるが飛び級してきた同じクラスの賢い女の子マブとともに、デイヴィッドはその卵を孵化させようと努力する。ふたりはどんどん仲良くなるが、自分と同じようにクラスの中では浮いてしまっているマブ、いじめられているマブのことを、デイヴィッドはどうしても学校の中では友だち扱いすることができない。やがてキング・アーサーと名づけたフクロウのひなが生まれるが、そこにはデイヴィッドには思いもかけないことが待っていた――。
　トリイ・ヘイデンのフィクション。うまくしゃべれず、読み書きが苦手な少年と、小さいのに賢くおしゃまな少女との交流。自分にとってはこれがふつうなのに、他の人にとってはへん。そんな共通点がふたりを結びつけてゆく。「最悪なことリスト」というタイトルだけれど、考えさせてくれるのは「大切なことリスト」にのせるようなこと。ノンフィクションが苦手という人は、こういう物語からトリイ・ヘイデンにはいっていくのもいいと思う。



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