これからのおまえとおれは、太陽と月になる。おまえが太陽で、おれが月だ。おまえは常に世間の脚光を浴びる生き方をしろ。おれは夜の世界に君臨する。暗く、どこまでも深い井戸のような夜。夜は昼の太陽が輝いてこそ、その深みを増す。深みを増した暗さは、やがて漆黒の輝きを帯びる――
              
 「竜の道」 白川道  講談社

 養父母に虐待されながらも、たくましく育った竜一、竜二の双子の兄弟。新しい人生を始めるため、二人はある嵐の夜、完全犯罪を決行する。それによって、竜一は別人の人生を手に入れ、竜二はエリートの道を歩み始めることとなった。整形によって顔を変え、別人の名前と戸籍で闇の世界に踏み込んでいく竜一。欲しいのは、わずかな金や権力ではない。この世界に君臨すること、1パーセントの中の1パーセントになることだ。クズのような連中に頭を下げ続けるのは、自分の生き方ではない。強靭な意志と頭脳で、竜一は徐々に力をつけていく。自分の野望をかなえるために着実に裏社会の階段をのぼる。特に、大物である曽根崎のバックアップを得てからは、曽根崎に何もかもを打ち明けることで、さらなる力を握ることになっていく。一方、竜二もまた、二人の夢をかなえるために、東大からキャリア官僚への道を着実に進んでいた。
物語は、主に兄である竜一の視点から描かれる。自分たちを虐げてた社会を、捨てた親を、そして自分たちに親切にしてくれた人を殺した者たちは、絶対に許さない。その思いで生きる竜一の生き方はかなりすさんだものだ。自分を守るためとはいえ、簡単に人を殺していくようなのも、気になる部分。だが、別人となった自分を探るものを消したことで、かえって刑事の手が竜一の身辺にまで伸びてくる。一体どうなるのか、これから竜一は、そして表の世界で光り輝いている竜二は……――
 というところで、実は「つづく」。
 あー、先が早く読みたいです。




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