「人類が頼る友もなく、広大な宇宙にひとり立ちむかわねばならない時代があった。でもいまは、助けてくれるものがいる。人類より強靭で、忠実で、有能で、まったく献身的に仕えてくれるものが」
「われはロボット」 アイザック・アシモフ(小尾芙佐訳)ハヤカワ文庫
ロボット工学の三原則を知らない人がいることを、実はつい最近知った。それはよく考えるまでもなく当然のことで、このロボット三原則はアシモフによる創作であり、SFと縁遠い人が知るはずもなかったのだ。けれど……そのことに驚きを感じるほど、この三原則はわたしの、そして多くのSFファンの身に染みついている(はずだ)。
それは、このようなものである。
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りではない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
ロボット工学ハンドブック、第五十六版、西暦二○五八年
さあ……それでは、人間のいうことをほとんどなんでも聞き入れ、ぜったいに危害を加えることのないロボットなんてつまらない? 否。そう簡単にはいかないのが、アシモフである。
信仰心に凝り固まったロボットやユーモアたっぷりの宇宙船を作るロボットなど、一筋縄ではいかないロボットたちと、彼らを独特の愛情で見つめるスーザン・キャルヴィン。この物語を読むたびに、現在わたしたち人類が、寄る辺なく、広大な宇宙にひとりで立ちむかわねばならないことに恐れにも似たさびしさをおぼえずにはいられない。
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