「大好きなシロベーン、なにがあっても忘れないで―――あたしたちが大の親友だったこと、それからいっしょに冒険をして、おたがいの命を助けたことを」
「たったひとつの冴えたやりかた」 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(浅倉久志訳) ハヤカワ文庫
若いコメノの学生カップルが、大学図書館でレファレンスを頼む。「雰囲気をつかみたいので」連邦草創期の人間のファクト/フィクションを選択してくれ、というのだ。利用者に喜んでもらえるよう、老司書が選んだ三冊の本―――この中に収められている三つの中編は、そういう形式を取っている。
中でも一話めはヒューマンの幼い女の子、好奇心たっぷりの十五歳、コーティー・キャスの異常で哀しいファーストコンタクト。脳に寄生したエイリアン、シロベーンとキャスの友情と、キャスの選んだ「たったひとつの冴えたやりかた」には、涙せずにはいられない。
他の二篇もコメノ(これがどのようなエイリアンかは三話めでやや明らかになる)のカップルたちのために念入りに選ばれたものであり……わたしたちはこれを読むことで、改めてヒューマンについて、人間のさがや強さ、弱さについて考えさせられることになるだろう。この三篇はそれだけの重みを持っている。だからこそ、わたしはラスト……コメノのカップルが、そのような本を選んでくれた老司書に捧げた謝辞にも胸を熱くせずにはいられなかった。
「あなたは他のだれにもできない助言をしてくださった。しかも、あなたとしては、そこまでなさる必要はなかった。勝手に自分でさがせ、とおっしゃってもよかったんです」
相手のためによりよい本を選び出し、そのことを喜ばれる図書館員―――モア・ブルー司書は、理想の司書の姿である、と思う。
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