「な、何なんだ、お前ら……」
「見りゃわかんだろう!」
                  
「らんぼう」 大沢在昌 新潮文庫

 見てわかるはずもありません。ウラとイケの「史上最悪のコンビ」「最も凶暴なコンビ」は、どう見ても刑事というよりはヤクザ、ヤクザというよりは……単なる乱暴者。
 しかし、とにかく楽しい。
 ランボーといえばガンガンに弾飛ぶ中で撃たれもせず、もちろん決して死ぬことなく任務を遂行する筋肉マンのお話だが(?)、このふたりも同じく。鉄パイプで殴られたところで、ひさしぶりに肩こりが治ったくらいにしか感じない。自分たちの強さを充分に知っているので、怖いものなどなにひとつない。筋が通ってるんだか通っていないんだか、やりたい放題である。イケとウラだと、ウラのほうがちょっとは人情がわかるというか、ほろっとさせるところがあるかなあとも思えないわけではないが、実際にこんな人がいたら、絶対目を背けて、視線が合わないように祈りつづけるだろう。
 大沢在昌の作品が数あって、なんでいちばん最初がこれなの? と思われたらごめんなさい。でもおもしろいんだもの。初心者可(?)。ちなみに新宿鮫は「中学のときにアメリカに転勤して高校生になった」少年に読ませたら、「わからないことばが多い」といわれたが、日本人でもわからないことばがきっと多い(警察用語とでもいいましょうか…)。その点、この話はわからない用語はまずない、と思われる。しかも、この新潮文庫には西原理恵子の解説ともつかぬ漫画がついていて……これまた爆笑。ともかく、だまされたと思って読んでほしい。



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