類は友を――いや、奇人は奇人を呼ぶ、とでも言うのだろうか。
「QED 百人一首の呪」 高田崇史 講談社NOVELS
都心の一等地に位置する豪邸で主が殺された。その場にいたのは家族と秘書、そしてお手伝いの女性。百人一首コレクターだった主人の手には一枚の札が握られていた。これはダイイング・メッセージなのか? つじつまの合わない証言、偽りの自白、さらなる殺人。
薬剤師の棚旗奈々が混沌を極める事件を知ったのは、大学時代の先輩、奇人とも変人ともいわれる桑原祟との再会によってだった。事件ジャーナリスト小松崎のもたらした情報に、祟が百人一首の謎という観点から光をあてることで明らかになる真相とは。
ジャンルでいえば、「薀蓄ミステリ」とでもいおうか。この手の薀蓄モノが苦手な人にはオススメしない。ただし、京極夏彦の作品とはちょっと違う。京極堂の薀蓄は、「薀蓄=真相」といった部分があって、謎は知識によって紐解かれることが多い。この物語の場合、たしかに知識が謎解きに一役買うことは買うのだが、薀蓄が迷走するおもしろさというものもある。知識はあるが、その活用法が京極堂ほどに定まっていないため、ああでもない、こうでもないとさんざんいじった挙句に解を出す。その過程が描かれている。
ということで、殺人事件の謎解きという話ではなく、百人一首の謎解きというだけでも楽しめるようになっている物語ではある。というか、個人的には殺人事件より、百人一首の話のほうがおもしろかった……というのが本音。文体にはややくせがあるが、小学校やら中学やらでさんざん勉強した百人一首。あの中にこんな謎があったのかあ、という感動を味わうためにも、ぜひ。
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