「二十歳前に読んでいたら、ディックを読みあさっていたかもしれない。夢中になっていたかもしれない。もっと、子供の頃に読んでおけば良かった。そんなふうに思うことがある。そう言う本がある」
         
「お父さんは時代小説が大好き」 吉野朔実   本の雑誌社

 ディック……はともかくとして、この文章はその後、著者にとってそういう本は「猫のゆりかご」「飛ぶ教室」だった、と続く。どちらも子どものころだの二十歳前だのに出会ってはまったクチであるわたしはにんまりとしてしまったりする。
 これは小説ではない。漫画……っていうのかなあ。とりあえず、本に関する漫画だ。本のオススメ文ならぬ、オススメ漫画、かもしれない。著者はススメているつもりはなくても、これを読んでいると読みたくなる本ってのもたくさんある。それにしたって似たような本が好きだったり、「きっと吉野さん好きですよ」と友人たちがススメている本がわたしの好きな本だったりってのが、この本を気に入ったいちばんの理由でもある(お父さんとも話があうと思う……時代小説好きだし、わたしも)。
 とかなんとかいいつつ、本の中身にはあまりふれないことにする。読んでもらうのがいちばんだし。
 ただ、ほんとにね――本との出会いに年齢ってあると思う。子どものころに読んだ本を大人になって読み返すことは出来ても、大人になってはじめて読んだ本を、子どものころに読むことは出来ない。あたりまえだけど、それがとてもとても残念なことってある。自分が大人になってから書かれた作品ならまだしも、ついうっかり見過ごした作品なんて、いくら悔しがってももう遅い。
 けど。著者はいまだに「アルジャーノンに花束を」を読んでいないそうである(文庫化したらとか書いてあるので、現在では読んでるかも)。が、読まなくてもいいんじゃないかとかねえ……ぶつぶつ。TVドラマ化されて図書館でも予約がたくさんついているが(著者のような読書家ならともかく)、いままでまるで本を読んでいなかったような人には、とっつき悪いんじゃないかなあ、といらぬ心配をしてみたりする。



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