「どうしてそんなに親切にしてくれるの?」
「おまえが必要だからだよ」
「んまあ」
「そういう意味じゃない」
「私が愛したリボルバー」 ジャネット・イヴァノヴィッチ (細美遙子訳) 扶桑社ミステリー
ニュージャージー州トレントンのブルカラー層で生まれ育ったステファニー・プラム30歳。弁護士だった夫が高校時代に大嫌いだった同級生とダイニングルームで浮気をしているところを発見し離婚。その後は下着のバイヤーとして生活をたてていたが、勤め先が売り払われてしまったために合併先の企業からクビをいい渡されてしまった。親のいうなりに再婚するなんてとんでもないが、求人情報はあまりにも少ない。そこで、いとこのヴィニーのところで書類整理でも、と出かけた先で、ステファニーは賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)という職に出会う。保釈中の身でありながら逃げ出した犯罪者を捕まえるだけで、保釈金の10パーセントが手に入るというキケンだけどおいしい職業。10万ドルの犯罪者を捕まえれば、1万ドル。しかしステファニーに与えられた仕事は、丸腰の男を殺して逃亡中の警官、ジョー・モレリを捕らえること。街中の女たちをうっとりさせるその男、モレリこそ、高校生だったステファニーの処女を奪った男である。はたしてステファニーはモレリを捕まえることができるのか?
とにかく抜群のおもしろさ。
しょっちゅうダイエットを口にしながらも、ついついチョコバーやピザにはしってしまうステファニー。葬儀に出かけては死に化粧についてコメントすることを楽しみにし、ボーイフレンドを連れてくるパワフルなメイザおばあちゃん。とにかく登場人物がひとくせもふたくせもあって、そのとんでもなさが最大の魅力。もちろん、モレリはもちろん、謎めいたバウンティ・ハンター、レンジャーとステファニーとの関係も見逃せない。
すでにシリーズは9作目くらいまで邦訳されていると思うのだが、一作一作が読みきりになっている。ステファニーの車は次々に炎上するし、メイザおばあちゃんの連れてくる「ボーイフレンド」もパワーアップ。巻き込まれ型なのか巻き込み型なのか、些細な事件がとんでもない大事件にまで発展するステファニーの手腕(?)にはどきどきはらはら、大笑いしながら楽しめる。
CWA賞最優秀処女長篇賞受賞。とにかく、騙されたと思って手にとってもらいたい。くだらないと思いつつ、読み出したらとまらないこと請け合い。
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