「おまえの力はもっと他のための何かなんだ」
「送り人の娘」 廣嶋玲子 角川書店
死者の魂が迷い、猛霊とならぬために、黄泉津比良坂まで導く役目を果たす送り人。額に目のかたちをした刺青を持ち、人々に恐れられつつも敬われている送り人の老女真由良は、自らの老いを感じたとき、後継者となる赤子を手に入れる。戦によって何もかもが焼かれ、無残にも国が滅びたその場所で、たった一人生き延びた赤子。蘇りの技を持つとされる火具地の姫として生まれたその赤子は、自らの出自など知る由もなく、真由良のもとで送り人としての修業を受けることとなった。
それから13年。若い娘ながら送り人として生きてきた伊予は、思いがけないことから、いたぶられ、傷つけられて死に至った妖狼を蘇らせてしまう。その力が、かつて蘇りの技を求めて火具地を滅ぼした猛日王の耳に入ったとき、伊予は平穏な送り人として生きることができなくなった。猛日王の魔手から逃れるため、伊予は蘇った妖狼、闇真の助けを借りて、雪山へと逃れるが……――
送り人という孤独な立場に生きることを余儀なくされながら、前向きに生きようとしていた伊予を襲った、突然のできごと。それがどれだけ禁忌であるかを理解していても、愛する誰かを蘇らせられるのであれば……その技を封じておくことは難しい。伊予の悩みや苦しみ、登場人物たちの生や死といったものに対する執着や怖れ。
生きるとは、死ぬとは、どういうことなのだろうか。
ファンタジーではあるが和風の雰囲気が強いので、「空色勾玉」や「鬼の橋」が好きな人は好みに合うと思う。
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