「“安らかな旅のお手伝い”だから、うちは」
                 
「おくりびと」百瀬しのぶ 小学館文庫

 楽団が解散し、チェロ弾きとして身を立てることが不可能となった小林大悟は、東京で暮らすよりはと、妻を連れて故郷、山形に戻った。しかし、そこでもすぐに仕事が見つかるわけではなく、毎日、新聞の求人欄をにらむ日が続いた。そんなある朝、「旅のお手伝い」という文字から、旅行関連の会社かと思って出かけたNKエージェントを訪れた大悟は、そこで「納棺」という仕事に出会う。当初、人の死を扱う仕事に嫌悪と戸惑いしか覚えない大悟だが、上司である佐々木の納棺師としての真摯な姿勢や、人々の死にかかわる仕事の重みに気づいてゆく。だが、そんな大悟も、妻にはまだ自分の仕事を話せずにいたが……
 第81回アカデミー賞で外国語映画賞部門を受賞した作品のノベライズ。もともとの「納棺夫日記」よりも、ユーモアがあるし、なにより主人公の性格が中高生には読みやすいのではないかと思う。若くてまじめな主人公が戸惑いつつ成長していく姿がすがすがしいし(原作では酒と女で身を滅ぼした主人公が、チェリストとしての夢破れた若者になっている)、原作にはない死の姿も描かれている。もちろん、原作の方がよかった部分もあるので、これはやっぱり読み比べてもらうしかないのだが。
 それにしても、映画でも「納棺の手引き」のビデオ撮りなんてシーンがあるんでしょうか……かなり笑えるんですが。



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