「あれも親父で、これも親父」由紀夫は言いながら深く息を鼻から吸い込んで、そして、ゆっくりと口から吐いた。
「よく分からないんだけど」
「オー!ファーザー」 伊坂幸太郎 新潮社
ごくふつうの高校生として暮らしたい由紀夫だが、家に帰れば父親が四人いる。なぜかやけにまとわりついてくる友人の多恵子にその事実がバレてしまった後も、由紀夫はその事実を伏せようとするが、多恵子は妙に由紀夫の家が気に入ってしまったようで、やたらと家に遊びに来たがる。そんな多恵子の気持ちをそらすために、父親のひとりである鷹とのドッグレースに多恵子と一緒に出かけることにした由紀夫だが、その会場で、妙な男たちの動きに気づいてしまったことで事態は急変。わけのわからない事件に巻き込まれ、しかもそれに幼なじみで要領の悪い鱒二まで絡んできてしまったら、事態はさらに悪化する一方……――
ふつうに冷めた感じの由紀夫と、四人四様でありながら、由紀夫の父親であることにこだわりを持っていることだけは共通している父親たちとの家庭生活。母親の知代が出張で留守をしているために、父(複数)と息子だけの家庭生活が、くっきりと浮かび上がっている。
さて、わけのわからぬままに事件に巻き込まれてしまった由紀夫は、いったいどうなっていくのか。それはもちろん、父親たちがそれぞれの得技(?)をいかして活躍するのである。あとがきにもあるように、同じような設定のものに「イローナの四人の父親」(クィネル)がある。気になった人はそちらもぜひ。
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