「ねえねえ知ってる? ホラー映画の登場人物が殺されない方法」
「ネバーランド」 恩田陸 集英社
クリスマスと大晦日をはさんだ冬休みの二週間を寮に残ることに決めた三人の少年。松籟館といういかめしい名のついたそこに残った三人のもとにふらりと現れた通学生のひとりを入れて、四人だけの奇妙な生活が始まる。さほど親しくもない、けれど完全に知らないわけではない関係。普段の学園生活では微妙なバランスを保って生活している彼らだが、限られた空間で顔を突き合わせていくにはそれなりの調整が必要だ。時に思いがけないほどの踏み込みをみせ、時にはじれったいほどそっけなく、彼らは次第に彼らだけの関係を打ち立てていく。これは、そんなある高校生たちの一時期を描いた物語だ。
――基本的にこれは恩田陸の「おしゃべり小説」のひとつなのだと思う。「木曜組曲」の女たちがそうだし、MAZEの男たちもそうだ。謎解きだ、安楽椅子探偵だといいながら、結局のところ彼らのしていたことは美味しいものを食べながらのダベリだった。ネバーランドの少年たちも、鍋を囲み酒を飲み(!)、ゲームにかこつけながら互いの過去や現在を語ることで、自分の中に抱えた何かを浄化しようとしている。それは「謎解き」が表に出てこないからこそ、薄皮をはぐように躊躇いがちな関係が前面に押し出されたものとなっている。
とはいえ、この四人の抱えたもの、それを互いに受けとめる姿は思春期の少年らしいのだけれど、「おしゃべり小説」が苦手な人にはすすめられない。ぽんぽんとあっちこっちに飛ぶ会話に散漫さを感じてしまうかもしれないし、アニメの登場人物になりきってテニスをするシーンについていけないものを感じてしまう人もいるだろう。ただ、昼休みの教室、放課後の図書館。校庭の片隅でだらだらととりとめもない話をした記憶のある人には……どこかなつかしい一冊だと思う。
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