いや、見れば見るほどデブで不細工なねこだった。
「モノレールねこ」(「モノレールねこ」所収)加納朋子 文春文庫
小学5年生のサトルは、ある日、縁側ででろーんと寝そべる不細工なねこを見つけた。お母さんが大事にしている上等な座布団に、わがもの顔で寝そべっているデブで不細工なねこ。愛想も悪いし、わざとみたいに悪さもする。お父さんと一緒に、壮絶なバトルののちにようやく追い払ったと思ったら、また戻ってきてしまう。けれど、戻ってきた不細工ねこの首には、赤い首輪がついていた。こんなデブで不細工なねこを飼おうとする物好きなんているんだろうか? ふと思いついて首輪に手紙をはさんでおいたら、次の日には返事が戻ってきた。顔も知らない相手タカキとの文通。つまらない話ばかりだけど、サトルはふたりが少しずつ仲良くなっていったような気がして、ついに「一緒に遊ぼう」という手紙を送ったのだが……――
ほのぼの系の物語が収められた短編集。そういえば、「モノレールねこ」は、最初、「あのころの宝もの」(メディアファクトリー刊)に収められていたのだ(こちらの本もオススメです。)。そんなことを思うと、推理作家・加納朋子ではなく、さりげない日常の一瞬を切り取るうまさが光る加納朋子、の作品なんだな、と思う。
解説では書評家の吉田伸子が「ザリガニの話で泣くなんて思いもしなかった」と書いているが、いろんな意味で、泣ける話が収められている。家族や友人といった、ごく身近な人たちとの、近いからこそ感じるぎこちなさや、あたたかさといったものが丁寧に描かれていて胸にせまる。
……それにしても。
この本に収められている短編って、「ほのぼの」とか「きずな」という共通点でまとめることもできるが、もうひとつ、「ダメ男」ばかりともいえるかも。もちろん、加納朋子のダメ男にむける視点は優しいのだが。
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