「もし、やつらがわしらの正体を知ったら」おじいちゃんは、うめいた。「そうしたら、どういうことをやつがやってのけるか、もう考えただけでこの身が震えてくるわい」
「ブルックルハースト・グローブの謎の屋敷」 シルヴィア・ウォー(こだまともこ訳) 講談社
ブルックルハースト・グローブ五番地に住むメニム一家にオーストラリアから一通の手紙が届く。あたらしくこの家の大家になった青年が、ぜひメニム一家と知り合いになりたい、お会いしたいと申し出てきたのだ。このごくなんでもない手紙が巻き起こす大騒動。なんとなればメニム一家は人間ではない……家族全員が等身大の布の人形だったのだ。たぐいまれな裁縫の才能をもったケイトおばさんに作られたメニム一家は歩くし、話すし、息もしているけれど、ボタンとビーズの目、布と詰め物のパンヤでできた身体をもった人形だ。人間になるべく見つからないようにしながら、ひっそりと生きてきたメニム一家。その世界が、いままさに重大な危機にさらされている……!
手紙だけでなく、夜警をしていたお父さんのジョシュアがネズミに足をかじられてしまったり、お兄さんの青いメニム、スービーが屋根裏部屋で大発見をしたり、メニム一家の日常はとんでもないことでいっぱい。布の人形のメニムたちが大好きな「ごっこ」遊び……お茶を飲むふり、遠くにいとこが住んでいるふり、なによりもいちばん長く続いている「ごっこ」は玄関ホールの戸棚に住んでいるミス・クィグリーとのものだろう。ミス・クィグリーはメニム一家の家の玄関の戸棚に住んでいるのだが、ごくたまに、戸棚から出てきて裏口から外に出て、家のまわりをぐるっと歩いてきて玄関から「メニム一家を訪ねてきたごっこ」をする。一家の主婦ヴィネッタはミス・クィグリーをお茶でもてなすごっこをする、というわけだ。
さて、大騒動の元となった手紙、その結果は本を読んでもらうとして……実はわたし、本を読みながら表紙の絵を見て、あれ、なんだかおかしいなと思ったことがあった。そしてその「おかしい」と思った感覚が正しかったことは、途中で明らかになるのだが、さて、みなさんは気づくだろうか。ぜひじっくりと楽しんでもらいたい。
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