「人が生きて死んでいくってことに、うすっぺらいとか、分厚いとか、あるのか? そんなこと、誰が決めるんだ?」
「続・嫌われ松子の一生 ゴールデンタイム」 山田宗樹 幻冬舎
伯母である松子の死から四年。笙は、大学は卒業したものの就職できず、自分が何をしたいのか、何をしたらよいのかわかぬままに毎日を送っていた。しかし、そんなある日、笙は偶然出会ったユリとミックに半ば強引に誘われた演劇にはまり、芝居への魅力にとらわれてゆく。役者になるとかならないとか、結局は将来に不安があるのではないかとか、そんなことよりも、とにかく夢中になれるものを見つけたのだ。
一方、医者になるために笙と別れ、医学部に進学して懸命に勉強を続けていた明日香は、医者一家に生まれた同級生の輝樹からプロポーズされ、学生結婚に揺れていた。輝樹と結婚することは、自分の夢とちゃんとつながっていくのか。堅実に生きることと、自分の夢に挑戦することの間で揺れる明日香。
「続」と銘打っているものの、松子が登場することはないし、松子のことが話題になることも少ない。しかし、それでも、笙と明日香の中に、松子の人生と向き合い、ひとりの女性が精一杯生きた証を目にしたことは、いまも息づき、彼らに影響を与えている。
松子の物語(「嫌われ松子の一生」)は、どちらかというと、やや古い時代の女性の物語だった。けれど、今回の物語は、笙と明日香という若者を主人公に据えたことで、過去を振り返るのではなく、未来に足を踏み出す力強さをもったものとなったと思う。
これから、笙と明日香はどうなっていくのだろう。松子の物語が、こんな風につながっていくとは思ってもみなかった。新鮮な感動を与えてくれる本である。
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