一見、つつましやかにみえるモナ・リザも、じつは相当の食いしん坊で、少女のころからコレステロールをたっぷり含んだイタリア料理を飽食していたことはあり得る話である。
「モナ・リザは高脂血症だった」 篠田達明 新潮新書
整形外科の医師にして作家である著者が、肖像画29枚を眺めて歴史上の人物達を診断してしまおうという企画ときいて、思わず飛びついてしまった。というより、自分が高脂血症になるという可能性が高いせいもある(それこそわたしは家族性高コレステロールで体型のわりに中性脂肪だのコレステロール値が高いのである)。
しかし、これを読んでいるとヴィーナスは外反母趾だし、モナ・リザは高脂血症だし、バテシバは乳癌だし……ろくなもんじゃない(笑)。西行は児童虐待を暴かれ、馬琴は総入れ歯だといわれてしまう。それにしたって、ミロのヴィーナスに妊娠線があったってわかって夢が壊れてしまう人もいるのでは、なんて考えると、それもまた楽しい。
小説を読むにしろ絵を眺めるにしろ、いろんな人がいて、いろんな方向がある。これまで、ただ美しいなあとか謎の微笑だなあとか(そういえば男か女か、なんて話もあったような、モナ・リザ)思いながら眺めていた絵も、角度を変えればカルテになる。
ということで、モナ・リザを眺める機会があったら、今度はぜひ目を近づけて、黄色腫やアフタ(口内炎)を思わせる発疹などを探してみようと思う。そんなところまで正確に描いちゃったダ・ヴィンチの偏執狂ぶりにも感嘆しつつ……
オススメ本リストへ