「――女ってねー、十六すぎたら、わめきたい時にわめいていい権利が生まれるのよ」
「十五歳と十一カ月の娘は?」
「それはだめ。まだ子供(ガキ)だから」
「スターライト☆だんでぃ」 火浦功 集英社
鳴海甲介、通称……もとい、自称ボギー。もちろんハンフリー・ボガード(作者注:二十世紀中期の世界的に有名な二枚目俳優。ヘミングウェイの後継者で、スクリーン上において、ハードボイルド・スタイルを確立したと伝えられる)を真似てのことで、ばりばりのハードボイルド野郎である。そんなボギーがエージェントとして派遣されたのは「辺境の星でじゃがいもが枯れた」という通報があったからだった。「じゃがいもが枯れた」……いったいこれは、なんの暗号か。はたまた真剣な訴えなのか。苛立ちながらもはるばる宇宙船で空を翔けるボギーの船に、なんと十六歳の女の子という厄介な密航者まで現れる。ボギーとジギー。果たしてこのふたりは「じゃがいもが枯れた」謎を解けるのか……!?
――って、解けなくてもいーんです。
のっけからくだけてしまうのは、これがむっちゃくちゃに軽い話だからだ。中身も軽いが、読めば読むほど頭も軽い。でも、はじめてこれに出会ったときの衝撃は(実は)いまだ薄れず……家に二冊しかない集英社コバルト文庫の、その一冊がこれなのである(ちなみにもう一冊は「たんぽぽ娘」)。氷室冴子も大和真也も新井素子も片付けたのに、なぜか手元に置きつづけてしまった一冊。会話のテンポ、展開のばからしさ、そしてなにより「ちゅどーん」(読んでくれればわかります。すごいんです、ほんと)。なおこの話には続もあるのだが、この本も含めてそれらが現在入手可能なのかどうかは、知らない。あしからず。
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