「その文章の内容を理解したって何の役にも立たないじゃないか。そんなことに頭を使うのは無駄だ」
「国語入試問題必勝法」 清水義範 講談社
まず最初に断っておくが、この本は入試前やテストひと月前くらいには読んではならない。受験用の参考書と思ったら大間違いである。
清水義範は「パスティーシュ」作家なのだそうだ。物まねで小説を書いている、とは本人の弁であるが、たとえば映画のパンフレットを真似して架空のパンフレットを作ったり、架空の料理の料理法について延々書いてみたり、教科書からはては野球の解説まで、とどまるところを知らない作品が数多くある。
そして、この「国語入試問題必勝法」は……国語の教師であったわたしがいうのはなんだが、たしかに、いままでいろんな国語の問題を解いてきて、
「これはいったいなにがいいたいんだ?」「文章そのものがわからない!」「この問題じゃなにきかれてるのかわかんないよっ」
ってことが……あった人もいるのではないかと思う。そのことをパロディにしたのが、これだ。理数系科目は得意だが国語はなにがなんだかぜんぜんわからない朝香一郎。彼と、彼の家庭教師月坂とのやりとりがこの短編のメインである。
たとえば月坂はいう。
「問題作成者の意図は、そうやってちょっとピントを外して受験者の頭を混乱させることにあるんだよ」
「今日は特別に、問題文を読まなくても解答できる秘儀というものを教えてやろう」
ばったばったとなぎ倒し、というような月坂の導きで、一郎は超難問と呼ばれるようなものさえも苦もなく解けるようになるのだが。
「受験国語」と本当の「国語力」について、しみじみと考えてしまう……
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