欲深くてこすっ辛くて、スケールは大きいが思慮が浅く、がさつで大雑把なのにやたらと細かく、だらしがなくて怠け者のくせにしぶとくてマメで、騒々しくて、乱暴で、凶暴で、非常識で、バカで、マヌケで、
「うがああああああッ」
「ぬらりひょんの褌」京極夏彦(「小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所」所収) 集英社
ご存知……なのかどうか、とりあえず、実際に漫画そのものを読んだことのないわたしでも、「こち亀」という略称を知ってるくらいに有名な漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(以降「こち亀」)と、複数の小説家たちの夢のコラボ。なにせ大沢在昌、石田衣良、今野敏、柴田よしき、京極夏彦、逢坂剛、東野圭吾という豪華な顔ぶれ。新宿鮫が、マコトが、中野の古本屋が、同じ短編集の中に並んでいるだけでもわくわくするのだ。それが型破りな両津勘吉をはじめとするトンデモナイ亀有公園前派出所の面々と出会ってしまうというのだから、それだけで読みたくなるわたしのような人はいるはずである。
さて、「ぬらりひょんの褌」では、そんな型破りな両津の上司である大原の苦い過去が語られ、それを謎の老人(中野の古本屋)が例の口調……「この世には不思議なことなどなにもないのですよ」で解き明かす(しかも「き、決めゼリフじゃ。版元や媒体を超えた決めゼリフじゃあ」という登場人物からのツッコミ入り。京極さん、かなり遊んでます)。薔薇十字団のその後(?)も少し伺えて、シリーズのファンは必読。
……といっても、個人的には今野敏「キング・タイガー」がお気に入り。それこそ、ただプラモデルを作るだけの話なのだが、その思い入れの熱さに妙に胸打たれるのである。最後のシーンも感動的。とりあえず、気楽に読めて、お腹いっぱいになる短編集。
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